高藪くんと付き合いはじめてもうすぐ半年が経つ。

ヤマ先輩は未だにたまに現れては現状確認をしてくるけど、わたしたちはとても楽しく円満でいる。


「高藪くんイヤなとことかないの〜?」

「イヤなとこ……あ、この前会う約束してる日、風邪ひいてるの隠して来たこととかかな」


すぐに調子が悪いことに気づいて指摘したら「会いたかったから仕方ない」って…そりゃわたしだってそうだけど無理してほしくないのに。

ぶつぶつ文句を言ってると舞菜が柔らかなため息をつく。


「それはうれしかったことの間違いでしょ」


以前は経験できなかった両想いは、奇跡と優しさと思いやりでできていることを知った。


「う…まあ、うれしいって思っていいのかわからないけど…だから困るの」

「癒し系カップルだよね。わたしも恋したいなあ」


舞菜はあの合コンの後もいろんな出会いの場に行ってるみたいだけど上手いこといかないって嘆いてる。こんなに可愛いのになあ。



今のわたしは、つらいことなんてそうそう無くて、充実している。


だけど、心の何処かで、何か、わすれものをしているような気分になるんだ。


それが、あの人のことだって気づいてる。

でもどうしようもできない。ヤマ先輩も、もうずっと会えていないって言っていた。


実家には戻っているはずなんだ。理事長がテレビニュースに出ている時、彼が映り込む時が何度かあった。