違うクラスなのに体育祭で高藪くんを応援した。晴臣先輩との思い出がつらくなったとき、「大丈夫?」って声をかけてきてくれて、ほっとしてよけい泣きそうになった。

成績表にはなるべく彼の近くに名前が入るように勉強した。

3年生のときにまた同じクラスになれたときは安心した。一緒に理科係をしたくて誘った。違う高校だと知ったとき悲しかった。

まだ結香子を好きなのか気になるのに確かめるのがこわかった。


大人っぽい普段の表情からは想像しにくい、可愛らしい無邪気なえくぼができる笑顔。

不甲斐ない姿だとしてもしっかり見ててくれるまなざし。

背中を押してくれる言葉を、何回ももらった。


ぎゅっと胸が苦しくなる。



「……違う高校に入って、彼女ができちゃってたらどうしようって考えてた……」


「…うん。俺も槙野に彼氏ができたら嫌」

「高藪くんに大切にされたら幸せだろうって…」

「俺も槙野が大切にしてくれたらうれしいよ」



さっき味のわからなくなったクレープが、また甘さを取り戻していく。


「幸せって思ってもらえるように、大切にする」


涙がこぼれた。

甘えじゃない。きっといつの間にか、高藪くんを想っていた証だと思いたい。


「わたしも……うれしいって思ってくれるなら、大切にしたい」

「本当に?どうやって」


涙を拭いてくれる指先はあたたかい。

優しい。


「付き合いながら…考えていいかな」

「うん。一緒に考えようよ」


孤独なんて一切ない、その言葉に頷いた。