今でもすぐに思い出してしまう。最後に抱きしめられたこと。腕の体温。心臓の音も…触れたくちびるがありがとうって言葉をつぶやいたことも、その声も。
「だけどさすがにもう泣かなくなったよ。クレープはおごらせて!」
「…じゃ、お言葉に甘えて」
高薮くんはイチゴとチョコレートホイップ、わたしはチョコバナナクレープを頼んで席についた。
2年越しの約束。
「飲み物もおごったのに」
「それはいいよ。クレープありがとう」
「いーえー。そっちおいしい?」
「うん。食べる?」
そう言って何食わぬ顔で向けられるクレープ。断ろうと思ったけどイチゴとチョコレートホイップが顔をのぞかせていておいしそうで、頂くことにした。
「ん!おいしい!こっちもどーぞ」
そう向けると彼はわたしの手首を掴んで固定し、伏せ目がちにクレープに口づけた。
「うん、おいしい」
「……やっぱり高薮くん、かっこいいね」
「は?」
え、わたし、突然何を言ってるの?
「いや、前から知っていたけど!久しぶりに会って実感したというか…クレープ食べるだけでかっこいいとかすごいよ!」
訂正しようかと思ったけど訂正することがなさ過さすぎてもうこれは褒めたたえるしかないと思った。