だから意地を張りたかった。何か、できるだろうって。
「お願いします」
会いたい。
何をしているのか知りたい。
どんな気持ちでいるの?
どこにいるの?
誰といるの?
自分じゃもう心の中のコントロールがむずかしい。
「どうか晴臣先輩の気持ちを知ってください。行動の理由も、言葉の理由も、何も思っていないんじゃないんです。何を考えているのか聞いてください。そして一緒に考えてあげてください。彼を独りに…しないでください」
好き。まだ、とても好き。
「お願いします」
彼が自分を嫌うことだけは、やっぱり嫌なの。
背中に温もりが添えられる。
「陽花里…行こう」
舞菜の優しい言葉に顔を上げる。
理事長の背中が少し先にある。わたしの言葉を聞かずに行ってしまったみたい。
「晴臣先輩は強いから大丈夫だよ」
「……うん」
ううん。強くなんてない。わたしは知ってる。晴臣先輩も、わたしに何度か教えてくれていた。自分が弱いこと。
自分を嫌っていて、自分の生きてきた時間を呪ってる。憎んでる。恨んでる。
今にも脆くて、崩れてしまいそう。
消えてしまいそうなの。
きっとやり遂げたら、彼は本当に何もかも失ってしまうんだろう。
そうならないように、理事長には晴臣先輩と向き合ってほしかった。
だけどやっぱり、わたしは無力で、ちっぽけだった。