何度も忠告してくれていたから、彼は悪くない。責めたいわけじゃない。むしろ悪いのはわたし自身だってわかっているんだけど、それでも…無鉄砲な恋にはもう戻れない気がする。
所詮は自分のことが一番大事で、可愛くて、守りたいんだってわかった。わかってしまった。
こんな自分になるなら、恋なんてしなきゃよかった。
冬休みが終わって3年生が自由登校になった。
始業式で理事長を見た日、廊下でもすれ違った。
「あ…あの!」
「ちょっと陽花里っ」
舞菜の制止を払って理事長を呼び止めると振り向いてくれた。晴臣先輩に目元と鼻筋が似ている。それだけで泣きそうになった。
「あの……突然すみません、理事長に聞きたいことがあって…」
何を聞くの。聞いてどうするの。
この人を彼は殺したいって言った。そういう人。
「何かな、1年5組槙野陽花里さん」
「え…」
「全校生徒の顔と名前は憶えているからね」
直接生徒に関わる機会なんてないような人なのに。
名前を呼ばれたことに安心した。
「晴臣先輩は…どうされていますか」
だけど彼の名前を出した瞬間、表情から温度が消えた気がした。
彼も時々そんな顔をしていた。
「きみもあいつと関わりがあるのか。2歳下の子にまで何をやっていたのか…」