晴臣先輩。

晴臣先輩。

助けてくれなくても、庇ってもらえなくても、晴臣先輩が傷つくよりずっとよかったのに。


心臓がつぶれそうに痛い。


「でも晴臣先輩が…っ」

「あの人の言う通りにしよう。これ以上、苦しめたらだめだ」


嫌だ。嫌だ。離れたくない。このまま彼をひとりにしたくない。孤独を感じさせたくない。

だけど、傷つけたくもない。


手のひらに爪が食い込む。

痛かった。こわかった。


関わるな、巻き込まれても知らねえから。そう何度も言って守ってくれていたのに、ごめんなさい。

何も解っていなくてごめんなさい。

そう言ったら「おれはそんなんじゃねえよ」って謙遜するんだろう。


立ち上がると足首が痛んだ。


高藪くんがわたしを背中にのせる。

あたたかくて、優しいぬくもりだった。


「晴臣先輩……」


ごめん。ごめんなさい。


いなくなることしかできない。

好きになったことは間違いだったのかもしれない。わたしのせいで、彼は傷ついた。

一番したくなかったこと。


今日のことは問題になったけど、わたしは何の関わりもなかったような扱いを受けた。晴臣先輩だけが生活指導の対象になり、色んな課題を出されたみたいだけど、佐伯さんとも別れたらしい彼はそれ以降学校に来ることはなかった。