それは晴臣先輩にとっては何の意味も持たないことを理解していながらも、わたしが喉から手が出るほど欲しい関係。
「死んだって無駄だよ…」
「いや、目障りだって言ってんの」
「死んでも、何されても、何しても、晴臣先輩のこと嫌いにはならない」
むしろ好きなまま死ねたことに幸福を感じるかもしれない。
もう一度頰をうたれる。
頰というより目元とこみかみの間くらい。女の人って怒るとこんなに力が出せるんだ。脳に響いて痛い。
グーだともっと痛いんだろうなあ。あの人はいつもその痛みを誰かに与え、返され、預かり、奪い、また返してきたんだ。
最低だね。
わたしはどうして彼が好きなんだろう。
「何睨んでんだよっ」
何でもないにしろ知り合いがこんなことになってるのにまだこっちを見ない。
むっとくちびるを閉じ、真っ黒の瞳で横を向いている。ねえそっちに何があるの?晴臣先輩の大切なものがあるならいいなあ。
「おみのこと見んなって!」
悔しい。
肩を押されて尻もちをつく。腕が痛い。
そのまま覆い被さってきてまた頰を叩かれる。胸や肋骨のところも叩かれる。
感情が乱れる。
彼女はわたしを叩くのに疲れたのか、彼のまわりにいる男たちを睨みつけながら呼んだ。