不良だからとか年上だからと理由をくっつけたけど、本当は覚えてなかったらと思うとこわかった。冷たくされたらと思うと切なくなって逃げただけ。

何を期待してたんだろう。

平坦な日常の中で、声をかけられたあの一瞬がやけにまばゆく残っている。


出向いてくれてうれしい。

怒っていても本当は良かった。だけどきらわれたくはないと、頭の中で防衛しようとした。

はじめての感覚に戸惑っている。自分が解らないなんて、じゃあどうしたらいいの。



「そうだ。聞きたかったんだけど、このTシャツに何した?」


さっきまでやっと笑ってくれていたのに今度は疑いの目を向けてくるから焦る。


「えっ、洗濯以外は何も…あっ!勝手に洗濯しちゃいました…」


まずかったかな。どきどきしているとまた笑われた。声や背丈はまだあどけないのに、笑い方は落ち着いてて、アンバランス。

危うさに、こころが引き寄せられてく。


「ありがとう、けっこー汚れてたのに真っ白にしてくれたよね」

「いや…」


それは、真っ白が似合いそうだったから。


「あとなんか太陽の匂いがしたんだけど、そういう柔軟剤があるの?」

「……っ」


時間が経ってるからそんなわけない。

そう思うのに、その言葉がどうしてかうれしい。