しっかりわすれられる日はこないと思う。

この先、どんな恋をしたとしても、その度に晴臣先輩のことを思い出す気がする。


叶わなかったのに不思議だね。

そういう恋だったってわかるんだ。



「おみのこと好きな子〜」


ひとりで門をくぐって帰ろうとしていたところを引き止められた。ヤマ先輩じゃない。

だけど晴臣先輩と一緒にいるところを何度か見たことがある人たちが何人かいる。


その後ろで佐伯さんが睨み立っていた。


「佐伯さん…?」

「こんな呼びかけに足止めてくるの、腹立つんだけど」


そんなこと言われても。


何て言葉を返そうか考えていると男の人に腕を掴まれた。



「一緒に来て」


佐伯さんのことが羨ましかった。

晴臣先輩に腕を絡めることができる存在。

だけどどこかで、わたしのほうが晴臣先輩との関わりが深いんじゃないかと奢っていた。


絵を一緒に見に行った。

家族のことを聞いた。

学園祭の話をした。

わたしのピアノを聴いて泣いていた。


周りなんて何一つ見えてなくて。

佐伯さんがどんな気持ちでいたかなんて考えもしなかった。

少し考えたらわかるはず。

きっと傷つけてた。怒らせていた。当たり前だ。



「…わかった」


自分の盲目さが彼を傷つけることになるなんて、思ってもいなかったよ。