悲しそうな顔を浮かべる。まるで自分が失恋したみたいなそれに、なんだかほっとした。


「高藪くんはやっぱり優しいね…。すごく救われてる。本当にありがとう」

「俺は何も、」

「ううん。わたしも高藪くんに何か喜んでもらいたい。何ができるかな?」


今までしてきてくれたこと、返せるとは思えないけど、少しでも何かしたい。


「結香子との恋のことでもいいよ。ごはんおごる?それともノートとる?好きなお菓子は何?作ってくるよ。あ、でも手作りはいやかな…!?」

「ははっ。ありがとう。じゃあ、景品で一緒にクレープ行こうよ」


ありがとうなんて言われることは何もできてない。

じっと見つめてくる瞳の柔らかさに、少し、心臓が動くのを感じた。


「わたしも誘おうと思ってたよ」

「え、本当?」

「うん。それに喜んでほしいので別のものを…」

「いい。今すごいうれしいから」



静かだけど、あどけない。そんな笑顔で言われた。


何もしてない。何もできてない。
そう言いたいけど何故か言えない。

お世辞とかじゃないことが伝わってくる。


どうして。

結香子が好きなはずなのに、なんだか勘違いしそう。


今はまだどうかこのままでいれますように。

晴臣先輩をわすれられるまでは。