やっぱりちゃんとあきらめようって思っている話をすると、高藪くんは「そっか」と短くつぶやいて、そのあとは黙々と実験準備をしていた。
正直、優しい言葉や背中を押してくれる言葉を言ってもらえると思っていたからなんか淋しい。
甘えていた自分に気づく。
思えば高藪くんは、教室と係りと委員会が同じで、部活が隣同士で、自分たちの友達同士が付き合っているだけの関係。
それなのに今まで本当に優しくて、頼りになって、彼と話すと前向きになれていた。そんなことも見えていないまま、ただあきらめるなんて報せ、そりゃ要らないよね。
準備がひと段落。いつも話しながらしていたからかみんなが来る前に終わってしまった。
高藪くんが携帯を取り出す。
ふたりでいる時に初めてされる行動に戸惑う。
つまらないかな。退屈かな。携帯より、わたし…足りていないよね。
「た…高藪くん!」
今まで頼ってばかりでごめん。そう言おうとした。
「わっ」
急に呼びかけたからか、彼は驚いて携帯を落っことした。拾うと画面に“落ち込んでる人の慰め方”という検索ワード。
この落ち込んでる人って、もしかして。
「ごめん見ちゃった。わたしのこと…かな?」
違っていたらどうしよう。自意識過剰だ。
そう思ったけど彼は手を合わせて謝ってきた。
「ごめんは俺のほうだから!」
「え……」
「気が利くことが何も言えなくて…ごめん」
器用そうに見えるのに。