そのあとはリタイアと挑戦を繰り返すカップルたちとボルダリングで対決する人たちなんかを見て楽しんで、自分たちも挑戦した結果景品をもらうことができて学園祭を満喫することができた。

励まされた。

高藪くんって本当に良い人だなあ。



「結香子、結香子」


そんな彼の想い人がひとりきりになったのは後夜祭が始まった頃だった。

わたしと違い友達が多い子だから全然ひとりにならなくてどうしようかと思っちゃったよ。

こっそり呼びかけるとぱあっと明るい表情でわたしの名前を呼び返してくれた。


「昨日はありがとうね。晴臣先輩と話す機会を作ってもらえて、助かったよ」

「よかった。突然でごめんね」

「ううん。…あと、わたしも結香子に憧れてるよ。いつも周りに人がいて、控えめだけど頭も良くて優しくてさ。話しかけてもらえてうれしかった」


素直に伝えると首を横に振る。


「私は優柔不断なだけだよ。八方美人だってよく言われる。そんな私にとって自分の意思がある陽花里はいつもかっこいい存在だったから、役に立てたならうれしい」


相変わらず控えめ。

だからこそ言葉が本心だって伝わってくる。


「これからも応援させて」

「…ありがとう。どうなるかわからないし、あきらめようって思ってるけど、味方がいてくれるならうれしい」


だからわたしも本心を話していた。

それはどこまでも自分本意だった。