どんな未来がいいかな。
わたしは何を望んでる?
夢見てる両想い。人を殺めることよりわたしと一緒にいることを選んでくれた晴臣先輩と共に生きてく日々。
それとも、変わらないって決めてる彼を、それでも想って残像を追いかけていく日々。
残像を心に宿して、前を向いて歩いてく中で別の誰かを見つける瞬間。
「俺もちょっと変わってきてる」
「えっ!もしかして両想いになれたの!?」
それは羨ましいけどすごくうれしいよ。
身を乗り出して問いかけると高藪くんは軽やかに笑って「ちがうよ」と言った。なんか呆れてる半面うれしそうだけど、両想いじゃないのに良いことでもあったのかな。
なぜか頭を撫でられた。
与えられ慣れない優しい温度に息を飲む。
「ちゃんとがんばってたよ。今までさ」
たくさん話を聞いてもらう機会があったからかな。高藪くんにそう言われて涙がにじむ。泣いちゃだめだ。
「泣くなよ。卑屈になるなよ。一途で直向きであの人にめいっぱい優しく想って、かっこよかったよ、槙野」
褒めてもらった。
晴臣先輩本人ではないけど、恋してよかったんだと思わされる言葉だった。
誰かに頭を撫でて笑いかけてもらうなんて、ピアノの発表会以来だよ。
「ありがとう高藪くん。話を聞いてくれて…今も、喝入れてくれてありがとう」
たぶん、高藪くんがいたから一途で直向きなわたしでいられたんだと思うんだ。