誰かに初恋を問われたとき、いつも上手く答えることができない。

言葉にできないんだ。その代わり頑丈に鍵をかけて奥底に仕舞っていた記憶が、昨日のことのように…昨日のこと以上に、鮮明に蘇ってくる。


そうなればもう早い。引っ張り出さなくてもすぐに浮かんでくる、彼と過ごしたたった1年間ともうひと夏の残像。

それは時間が経った今でも、最下の人だとしても、一番大切だった。


身体も心も成長なんてまるでしていなかったあの頃、まぶしくて、考える間もなく気づいたら惹かれていた。未熟ながら、強く、強く。


幼い制服姿のまま血色に染まる拳。彼の足元に転がる玩具みたいな個体。免許を取れる年齢でもないのに自由に落書きしたバイク。道から逸れたポケットに忍ばせていた刃物。先を向けて脅しのために吸っていたような煙草。


自分よりも他人を傷つけて、誰も信じないまま誰かに嘘をついて、遠ざけるために笑っていた。


最低で、最悪で、巨悪な……だけど、焦がれる夢を今でも見る、たくさんの記憶がある人。



わたしが、初めて好きになった人。