「なあなあっ、俺たちもジオルグと旅に行ってもいいのかっ?」
「ああ、もちろんだ。街に行ったらカーミラとリッツにも紹介しよう。なあシン」
「そうだね、俺はなんかカーミラに嫌われてるけど」
「女だと思われてるからだべ」
「ああー……とばっちりすぎるなー……」
「何の話だ?」
白けた顔で二人がにらみつけてくるが、アムは聞いても教えてくれないので本当に意味が分からない。
自分で気づいてどうにかしろ、とリッツにも言われるしそういう話をするとカーミラにボコボコにされているしでしばらく課題になりそうだ。
「結界は溶けたけど、生態系まではそんなすぐ変わらないと思って今日は調査に来たんだ。アールもよろしくね」
「おうっ! またみんなと一緒にいられるなっ!」
「そうだな。邸の中の食材はまだ無事か? せっかくなら動く前に邸の掃除と、腹ごしらえをしていこう」
「賛成賛成賛成いい! イーズおなかすいたああ、人間の体っておなかすくんだねええ」
「不便だぞ、腹は減るし、眠くなるし、できないことも多い。が、不便なほうが、楽しいことも多い」
「あとはジオルグの寿命延ばす方法見つけたら完璧だね」
「おいおい。……まあ、そうだな。とりあえずその話は食べながらにしよう」
慣れた足取りで玄関を開けて、厨房までの道を笑いながら歩く。見慣れた風景、聞きなれた笑い声。ここに足りなかった自由さえ、今は思いのままである、
ここは極北、グラシエル山脈。
そこにもう、罪人の影はないという。