「いたたた、あーびっくりしたべ! なんなんだべなもうー」

「……アム?」

「へ? どしたんだべシン様?」

「イーズ、なのか?」

「えへへええ、ジオルグナイスキャッチだったよおお。なにそんなに驚いてるのおお?」

 二人を地面に下ろし向い合せると二人ともぱちくりと目を見開いた後に「え!?」とあんぐり口も開けていた。

 最後に、ゆっくりと降りてくる少年をシンが抱き留める。

 利発そうな、それでいて活発な印象を受ける顔立ちの少年だ。少しゆすると、うっすらと目をあけて、まぶしそうに周囲を見渡した。

「……あ、れ、邸だ、なんで……シン様? ジオルグ、アムと、イーズも」

「「アール!」」

「ぎゃあっ!?」

 がばっと音を立ててアムとイーズがアールに抱き着く。びいびいと大泣きする二人を見て訳が分からないというようにシンとジオルグとアムとイーズを順繰りに見つめていた。

「俺、そうだ、俺っ、……死んだ、はずじゃ」

「あの後、シイが生きててね。対峙することになったよ。もう結界は消えてるから、ここは雪山じゃない」

「えっ、シイ生きてたのかっ? ていうか、なんで俺は、生き返ったんだ? っていうかアムとイーズも人間みたいじゃね!?」

「気が付くのが遅くないか!?」

 どうしてそうなったのか、まではわからないがシンがぼそっと「シイかな」と呟くのでわからないなりにそう思うことにした。そうだ、この洞窟はシイの出来事の影響下にある。そして精霊は、何でもできるのだった。何もしないだけ、とはまあ時と場合によるようだが。

「うおおお、すっげぇ、そうだった体があるのってこんな感じだったよなっ」

「魔法は使えるままだけどおお、もうイーズたち精霊では……ないっぽいねええ?」

「ならお前たちは新しい魔法族というわけだな」

「ええ? またあのめんどくさい取り調べしなきゃいけないんだべか?」

 種の記録保全のためのうんぬんかんぬん、を思い出したのかアムはとても面倒くさそうな顔をした。

 ロンディウムに行くのだとイーズが説明するとアールは嬉しそうに飛び跳ねる。