「おー、思ったよりなんともなかったべな」

「まああ、ここ山頂からちょっと距離あるしねええ。それに……まだ、シイの気配がするからああ、守ってくれたのかなああ」

 元が同じであっても、分割した魂はそれぞれ別のものであるという。

 オリジナルは、あの相対したシイなのかもしれないが洞窟を守っていたシイの分魂は特に影響がないようだ。「愛している」というあの言葉は嘘ではない。

「お屋敷、どうするうう? 保存魔法と対人避け魔法かけとくうう? 冒険から戻ってきたら使うかもだしいい」

「まあ、そうだね、俺たちの家だしねここ」

 ジオルグの家に転送装置でも置こうか、とシンが笑った。ここは、これから先もこのままのようだ。すこし安心した。

 なんとなく、で持ってきたアールの服を広げてみる。ついこの間まで一緒にいたのに、もう何年もあっていない気さえする。さみしいというよりも喪失したという感覚のほうが強い。それはジオルグだけではないらしかったが。

「アールに、会いたいべ」

 アムが呟く。

 しんとした洞窟の中で、ふいにどこかから風が吹き込んできた。

「なんだろう、どこから……」

「まっ、おいシン!」

「え?」

 手に持っていた服が勝手に震えだしたので思わず手を離す。ふわふわと宙に浮きあがったかと思うと、白い粒、まるで「星空スープ」のそれのように、薄暗い洞窟の中が銀河のように光で満ちる。

 どうすることもできずただ見つめているとアムとイーズも浮かび上がる。困惑している二人だが、まとめてひときわ強い光に包まれたかと思うと大きな粒になって今度は光がはじけ飛んだ。

「わっ」

「おっと……おい、おまえたち……」

 落ちてきたそれを慌てて抱き留める。服装や、装飾品は見慣れたものだが落ちてきた子供は明らかに人間の姿をしている。

 アムのヒレについていたバンドや、イーズの首にかかっていた鈴、そして緑をベースにした少年服。

 そのどれもが、毎日見ている三人のもので