森のほうから草をかき分けて進み出てきたのは若い男性たちで、その姿はまるで雪山にでも向かうような、でも自分が知るよりはどこか古めかしい重装備。ふうふうと汗をぬぐっているものもいた。全部で十二人。
「グラシエル山脈の調査に来たはずが、雪はないし壁もないし、気絶しているあいだになにかあったのかと。まさか俺たち以外にも人がいたなんて」
「失礼だが、あなた方は?」
「ああ、すまない、自分たちはこの度、グラシエルの調査に有志でやってきたものだ。この二人は最初、門の前で待機していたのだが、連絡がつかないからと追ってきてくれてね。我々が山に入ってからまだ二週間くらいだと思うのだけど」
十人の調査隊、なんて後にも先にもそれしか心当たりがない。
三日ともたず死ぬ、と言っていた。だが、上位三種以外は歳をとらない、とも言っていた。どちらも正しいのだとしたら? それは本来の死ではなく、仮死状態のようなものだとしたら?
「……まず確認させていただくが、今は西暦二〇六年の十月だ」
「え!? いやいや、西暦一六三年だろう?」
はっきりした、役四十年前、北に踏み込んでそのまま帰ってこなかった調査隊がいる。
彼らは、それなのだろう。
「あ、いたあ! いましたよリッツ!」
「ほんとだ! おーいっ、ジオルグー! 目ェさめたらいねーんだもん、ずいぶん探したよ」
「……カーミラ、リッツも」
「なぁに泣きそうな顔してんだよ? いかつくてこわーい」
「失礼ですよリッツ! でも心配しましたぁ……なんでこの人一緒にいるんですか」
一度会っているはずだが、正気を失ったという調査隊の面々はシンのことを覚えていないらしい。翻ってせいぜい二ヶ月、正気のままだったのカーミラとリッツはシンと会ったことを覚えているようだった。
「……で? なにがどうなってんの?」