「シン様っ、ジオルグ、起きてったらああ」
「うーん……?」
真っ白な光に飲み込まれたのは覚えている。ずきずきする頭を抱えながら体を起こすと、傷はふさがっているし、シンはいろいろいつも通りのサイズに戻っているしで、何が起きたか一瞬わからなかった。
「おはようだべ、ジオルグ」
「ああ、おはよう。ここは……?」
柔らかいあたたかな南風と、萌ゆる緑があちこちに広がっている。自分たちは少し開けたはらっぱのような場所で寝転がっていて、洗濯物でも、冒険でも何でもできそうな透き通る快晴。
「う、ん……ジオルグ……アム、イーズ……」
「おはよおお、シン様ああ。ねえ、起きて起きてええ」
「……なに、これ、死んだ? 雪がない」
ぽかんとしてきょろきょろと当りを見まわすシンと顔を見合わせる。アムがにっこり笑って「第九が消えたんだべ」と穏やかな口調で言った。
「消えた?」
「最後、シイのあれは、竜族の唯一の自害の方法なんだべな。大人しく死ねないから誰もやらないらしいけど、まあここは広かったから」
「シイは、死んだの?」
「自害はねええ、なんであれ白翼種の倫理が許さないからねええ。……出来事にも、なれないかなああ。あっ、でも分割された魂のほうは、出来事のままかもだけどおお」
約二か月ぶりの装備もなにもいらない穏やかな場所の穏やかな天気に、戻ってきたというよりも見知らぬ場所に飛ばされたような錯覚すら覚える。あの雪山は、まるで夢だったかのように。
「あ、人だ! 人がいたぞ! おおい。君たち!」
「ん?」