「どう、して、他人のためにそこまでできル? どうして咄嗟に前に出られるノ? どうして、どうして……っ!?」

「お前が、どう、いうふう……に、きょうまで、……そんなのは、知らないが、そういうこともある」

「なんで、だって人間はちょっとのケガでもすぐ死んじゃうかもしれないのニ……!?」
「人間だからだ」

「は…………」

「俺たちは弱いし、長生きも……できない。そういう、種族だから、な。だからこそ、自分以外だって、そうであることをよくわかっている」

 傷がふさがるだけでとても楽になる。イーズの手を借りて起き上がると天地がさかさまになりそうな酷いめまいがしたが徐々に視界も戻ってきて、ぼやけた焦点もしっかり重なった。

 心配そうな顔をする三人と、此方を見て悲しそうに呆けるシイ。

「わかっているからこそ、咄嗟に助けたりすることもある。たとえそれが、竜族と魔法族の、亜種の、ダブルであっても。シンが友達である以上」

「家族じゃ、なくてモ?」

「ああ」

「血がつながってないとしてモ?」

「そうだ」

「そう……そっカ……なんだ、もう、シンのこと、閉じ込めなくてよかったんダ」

「え?」

 少しずつシイが距離をとる。逃げている、というわけじゃなさそうだった。こちらを見ながら後ずさりをして、なにかを図っているように見える。

「…………シン」

 愛おしそうに、それはそれは優しい声音で、それはまるでおぼろげに記憶の奥底に居る母親と同じような優しさを含んでいて。その目は、やっぱり三日月のように細められていて。

「きみのことを、世界で一番愛しているヨ」

「なに……うぅっ?」

 シンが問い返す暇もなく、シイは自らが作り出した大きな魔力の塊を飲み込む。

 刹那、轟音と、地響きと、この世の終わりのような光に包まれて何かが崩れていく音を聞きながら四人は意識を失った。