「魔法が使える文明五種族は最初から知能が高い、けどその割にその体は人類種よりも弱いんじゃないかって言われているよね。これは俺がここに来る前からずっとそれが通説だ」
たしかに、それはジオルグにも聞き覚えがあった。
現状交流がない魔法種族たちだが、どうして交易が絶えたのかを不思議に思ってそればかり研究していた学者がいる。その文献によると人類種以外は幼体のうちはその肉体がかなり弱く、それを人類種が人質にしたという事実が残っていたそうだ。
成人した魔法種族には太刀打ちできないからと、そんな卑怯な真似をしたのだろうが断絶の理由のひとつはそれだろうと考えられている。
「つまリ?」
「ダブルは持って生まれる能力に対して器が弱すぎるんだ、だから死ぬ。そのまま大人になったら、竜族と魔法族なんかでは御せない新種族としての立場を確立してしまう」
ダブルは長生きしない。ダブルの幼少期はかなり弱い。
どちらもシンが言っていたことだ。理由がどうであれ、まずシンが十八まで生きていたことがあまり普通ではないのかもしれないとそう思ったのも、ついこの間。
「俺は亜種の子供だから、きっと器が普通よりも丈夫だったんだと思う。これから先は、わかんない。外に出たらあっさり死ぬかもしれないけど、まあつまり、本気で俺を怒らせたら俺はまあまあ強いってことだよ」
そういうとシンは赤い光を纏う魔法を立て続けに放射する。竜の表情というのはよくわからないが先ほどまでの余裕そうなシイじゃないのは確かだった。こちらを攻撃したことで文字通り、シンの逆鱗に触れたのだろう。
「シン様!」
「シン様ああ! そんなに魔法使ったら体内魔素がああ!」
体内魔素、魔法を使うための体力のようなもの。自分にはなにもわからないが、シンにも見えるのだ。アムとイーズにも見えているのだろう。
シイは基本的に避けているだけ。あの調子ではシンの体内魔素が尽きるほうが早いに決まっている。いくら通常より多めに余力があったとしても無駄うちするのであれば弾の持ち数が多くても意味がない。
「はぁっ、はあっ……くそ、ちょこまかと……」
「いいのかナ、そんな体たらくデ? ちゃんとしないと、いざって時になんの役にも立てないヨ。……もう終わりにしよっカ、今ならまだ許してあげるからさア!」
咄嗟に
そう、咄嗟にだ。なにも考えてなんかいない。勝手に体が動いただけ。シイが放った魔法は詠唱されていないから、きっとシンは避けるなり弾くなり、そうでなくても対抗策を持っているだろうことは頭ではわかっていた。
たとえ疲れ切っていても体内魔素がまだ残っているのであれば自分が出る幕などないだろうことも。
それでも、動かずにいられなかったのは
「……シン!」
友達を見ているだけ、なんていうのが、自分にはできなかったからだ。
「ジオルグ……!」