「外に出た瞬間も、特に何もなかったんだ。ずっとこのままで、寒いとも思わなかった」

「どうして……」

「……考えられることはひとつあるけど、でも、そんなのってええ」

 イーズが困ったように上を見る。

 目線の先に居たのは、シイだった。

「シイがジオルグを助ける理由がわかんないよおお、だってええ、さっきだってあんな爆風で下手したらジオルグ死んじゃってたかもしれないのにいい」

 雪のせいかと思っていたが、たしかに受け身がどうとかいう理由ではなく死んでいてもおかしくなかった、と今更思う。

 命の危機に瀕していたくせに何も感じなかった。なぜ?

「っああぁ、鬱陶しいなあああア! だったらこうするまでだヨ、真第三魔法・天包っ」

「うわっ」

「ジオルグ!」

 こちらめがけて拳ほどの大きさの水泡は射出される。そのものに大した殺傷力はなさそうだが、あれが割れると中に入った水がはじけ飛ぶらしい。こんな雪の、むしろ雪も凍るような場所でうかうか水浴びなどできるはずもない。体が凍って崩れ落ちそうだ。

「シン、さっき言ってたダブルが長生き出来ない理由、聞かせてもらえル?」

「なに、興味があるの」

「ふふっ、さァ、どうかナ」

 人をけむに巻くような態度で、そういいながらシイは距離をとった。時間でも稼いでいるのだろうか。いぶかし気な顔をしつつシンは口を開く。