ずん、とゆるい地鳴りがする。崩れ切った雪が流れてくることはしばらくないだろうが、そこかしこにある背の高くなった雪がばらばらと崩れる。

「近い、地震か」

「グラシエルで地震なんて起きたことないよ……なんのお……と……」

 シンが後ろを振り向いたので一緒に目線を滑らせると、目視数百メートルの雪が間欠泉のように吹き出して空を舞った。

「なん、で……!?」

「ああー、うん、そうダ……体があるのっテ、こういう感じだったナァ」

「あれは、さっきの竜」

 サイカの体。空っぽだと言っていたはずのそれはずるりと大穴を這い出して、あくびをするとその大きな体をよじって伸びをした。まるで、朝起きたときのような自然な動きで。

 こちらを見る目だけが、シンの色ではない。シンの目はサイカとアマルティアの色を混ぜたもののはず。目の前に居る霧氷竜の目は朱鷺のような淡いピンク色をしていた。

「ああ、シン。久しぶりだネ。何百年ぶりだろウ。アムも。そっちの二人は……初めまして、だネ」

「どうして、なんだべ……どうして!」

「どうしてシイが生きているんだ!」

 シンとアムの絶叫に、目の前の竜はにんまりと笑って見せた。