「シン様! ジオルグ!」

「! そうだ、アール。アム、イーズ、アールは!?」

「……手は、尽くしたん……だけどおおぉぉ……ひっく、ひっく……」

「っ」

 白と緑を基調とした、いつも同じ少年服。

 穴の開いた腹部からとめどなくあふれる血のような黒い何か。彼らの食していた「出来事」は、体の中でこうして別の星空になっていたのだと、これから先も知りたくなんてなかったのに。

「アール、ごめん、ごめんね、俺があの魔法を使わなかったら」

「違う、俺が油断したからだ、俺をかばったりしたから」

「へ、へへ……か、った……? 俺、ふたりのこ、と……たすけられ、たんだ なっ」

 ごぽっ、と空気の音がしてまたドロリと腹から黒が流れ出る。

 アールを抱きしめるようにすんすんと鼻を鳴らすアムとイーズの手足はアールの黒でべっとりと濡れていた。

 精霊は死んだら出来事になる。

 それはあくまで寿命の話だ。それ以前に精霊が「死ぬ」例をジオルグは知らない。シンも、アムもイーズも。戦うこと、痛々しいこと、それらを避けてきた精霊の記憶の中に他者に害されて死ぬ記憶なんて一つだってありはしない。

「よか、たな……じお、ルグも……おれいま、手、合わせしたら、まけちまう……かもな、っ」

「今は、そうだな。治して、治してまた」

「ふしぎだなぁ」

 ぱきんと軽い音がしたほうへ目を凝らす。プラトン立体のアールの頭部は、プリズムを思わせる虹色できらきらとあたりに光をこぼす。星の角に罅がはいり、触ってもいないのにだんだんとその亀裂を広げていく。

 ぱきん、ぽきん、ぱきん……。

 ぱらぱらとおちてくるそれはかつて見たガラスの砂浜と同じ色をしている。