「イッシキ流、『篝喰』」

「アアアアアアアァァァ!」

「『四光』!」

 左右から斜めに四度振り下ろし、確実に首と腕を跳ね飛ばす。

 べちゃっ、という気色悪い音とともに地面に落ちた首は眼孔と口から怨嗟を垂れ流していた。

「これで、終わりだ! 『八卦』!」

 いうが早いか細かい破片となった肉片が床に振り落ちると、体のほうも地面に倒れ伏して動かなくなった。

「す、っご。人間すごくない?」

「いい機会だと言っただろ」

「は、はは……ははっ、早すぎでしょ。なに、あの……っ、くび、……ぁぁ」

「シン」

「…………」

「お前の母親はお前のために命を賭した。お前の父親はお前の母親に命を賭した。それを止めたのはこの俺だ、お前じゃない。お前は誰も、殺してなんかいない」

 例えばシンを罪人と呼ぶとして。

 彼の罪はなんだ。生まれてきたことか、母親の魔力を吸ったことか、父親を狂わせたことか、開かずの北の門を作るきっかけになってしまったことか。

 否。シンの罪など、この世のどこにも存在しない。

「おれは、だれも」

「お前の罪などなにもない。胸を張って外に出ろ。俺と一緒に行くんだろう」

「ああ……うん、そう、そうだ。そうだね……」

 真珠のような、水晶のような、波のような、雪のような。泣いても様になる顔というのがこんなに憎たらしいとは知らなかった。

 同じ轍は踏みたくない。

 もう目の前で、死んでほしくない。