肩で息をするシンと針山になった広場の中心部。あれではもしかしたら原型をとどめていないのではないか。
ふと竜の、サイカのほうをみるとあれだけの爆風と落石があったのにも関わらず彼女の周りだけは静謐に満ちていた。きっと特殊な防護でもかけられているのだろう。
「シン様っ、ジオルグ!」
「みんな……」
「わああああん、わあああ、よかった、よかったあああ、死んじゃうかと思ったよおおお」
「そ、そーかっ? 結構余裕そうだったじゃん……っう、うう……ひやひやしたじゃんかよーっ!」
「ケガしてないべかっ? どっか痛くないべか?」
「なんともない、大丈夫だ」
負の感情の渦巻く場所だ。戦っていなくてもきっともっともっと痛くてつらい思いをしているだろうに駆け寄ってきた三人は安心して泣き出す始末だった。
中心の針山はピクリとも動かない。終わったのか、存外あっけなかったな。
魔法が崩れたら洞窟も落盤が起きたりするかもしれないと思っていたが杞憂だったようでなんの変化もない。どこからか出口を探せば……
「ジオルグっ!」
「え」
アールの声と同時に、強い力で突き飛ばされる。
空気と、岩と、肉を割く音がして、ぐしゃりとなにかが崩れ落ちる音がした。
「へ、へへ……にんげん、は……ちょっとの、けがでも……しんじゃう、もんな」
「アール!」
「う、うそ、うそうそうそおお、だってだって生命反応は消えたはずなのにいい……!?」
アールの腹部を黒い針が貫いている。慌ててシンが抱き起し針を消す。傷口に手をかざすが傷はふさがらない。
血のような、そうではない何か、いつも三人が飲んでいる「星空」によく似た黒くきらきらしたなにかが腹からあふれ出してシンのワンピースと地面に広がっていく。