「しん……ssっsっしししssしん、シン? シンだって? ああ、シン! そうだ、ぼくの息子じゃないか、ぼくの、ぼくのぼくのbbbbbbbぼ、ぼくの息子、息子がアアァァァァ」

 人の声の出し方ではないなと思いながら次の衝撃に備える。煙が収まると火球を打ち込んだあたりはぼこぼこと地面がえぐれ大きくヒビが入っている。中心にいるアマルティアはほぼ無傷で少し髪や服装が乱れた程度だ。

 精霊魔法を吸収しているかも、ということだったから人間、ないし普通の魔法使いだと思って挑んではいけないらしい。ぎゅっと柄を握ると同時にさきほどより大きな矢が腹のあたりに飛散する。

「ぐっ、ぅ……ッ!?」

「ジオルグ!」

「そう、シン。シンじゃないか、それでkkkき、きみは誰なんだ? シンと一緒にきただろうシンには友人なんかいないはずだだってddだってdだってシンはそれ、それは罪深い子で、そう、罪、この子は母親をこ、こ、こkkっここ、殺してっ、殺したっ大っ罪っ人っなんだああぁぁぁぁぁ!!!!」

「戯言を!」

「ジオルグ! 危ないっ!」

「うわああああぁぁ死ねっ死ねっ死ねええええぇぇ! 誰なんだお前はなんなんだ何しに来たんだアアアアア゛ア゛ア゛ッ!」


 理性のない獣のようだ、と思う。

 伽藍洞の目も、愛を乞う絶叫も、自身に殻こもろうとするこの攻撃も、その一つ一つが強大な力で構成されているのはわかるのにどうしてか中身が伴っていないような気がする。

 聞いた話では、父親としての資質は無くてもそれなりに幸せな家族像を作るのに尽力していた人物だ。サイカしか愛していない、というのはあくまでシイの主観であって父親として自覚するのが遅いだけの知人はいくらでもいる。

 それこそ冒険者組合には子供が生まれたのに危険な調査を続けているやつなんてたくさんいたがそのどれもが自覚に乏しいだけだった。徐々に前線から離れて、久々に顔を合わせてみたら立派に父親だった奴も見ている。

 アマルティアはどちらだろう。本当に終始サイカにしか興味がなかったのか。危険だとわかっていたら生まれてくる前の子供より自分の妻を優先したいと思うのは当然のことなんじゃないのか。それは果たして歪んだものなのか。

 わからない。少なくとも目の前の男はもう、きっとその時のアマルティアとは別人なのだろうから。