「日常で使う然用魔法はまばたきみたいなもんだから詠唱とかいらねーんだっ、でも禁号は詠唱と魔法陣が要るし、真魔法もものによっては魔法陣とか、道具とか必要なんだ。施天魔法は上位三種族しか使えねーけどこれは精霊魔力や翼魔力を使うから詠唱できてもほかの種族には使えねーんだぜっ」
「聞く前に解説してくれて感謝する」
「へへっ、なに聞きてーのかなんとなくわかるもんだなっ」
この魔法は、上位三種族だけが使える高位結界魔法らしく、ほとんどの生き物は半径五メートル以内に近づくこともできないだろうという。
壁が見えるわけでもなく、手を伸ばしても何も感じないが外からの攻撃はすべて弾いてくれるという優れものだそうだ。成れの果てとはいえ精霊は精霊。頭が下がる。
「召喚獣が派遣されてきたならもうすぐだと思うよおお、さ、行こうかああ」
イーズの号令で召喚獣が飛び出してきた道のほうへと進む。
あちこちに水晶のようなものが生えていて、そのどれもがシンの目に近いオレンジと金を混ぜたような色をしている。ただ、未加工とはいえそれでもなんとなく色が曇っているというか濁っているように見える。
触らないほうがいい、というのも本能的に感じる。美しいが、危ないものだ。
「魔力が澱んでるんだべ、そうすると共鳴しやすい鉱石は濁るんだべな」
「むかし絵本でみた魔法使いの杖みたいだな。水晶の付いた大きな杖を使う魔女の話なんだが」
「鉱石に依存した魔法ってのもあるからね、触媒としては優秀だよ。魔法との相性も良いんだ」
「なるほど」
おとぎ話も全部が創作ではないようだ。