「どちらにしても、ここから出るには山頂に行くしかない。行って、お前の両親を説得するなり……しないとな」

「そうだね、きっとそういうときなんだ。もう俺は守られるだけの子供じゃないことを証明しないといけない」

 泣きつかれたのか眠りこけた三人を大きなベッドに転がしてジオルグとシンはふう、とため息をつく。

 勘でしかなかったそのピースがかっちりはまり込んでシンの過去を紐解くとわかりやすい一つの映像になる。ここはやはり牢獄ではなかった。

 魔法を展開させた後、きっと本当はシンを助けるための手段も講じられていたはずだ。それができなかったのは魔法陣の中にアマルティアがいてシイがいてサイカがいたことで、イレギュラーが起きてしまったからだろう。魂の在り方も、本来起きるはずだったなにかも、精霊魔力とサイカの体があったことで予想と大幅にちがったはずだ。

「そういえばさっき聞き損ねたが、精霊の魔法とお前たちの魔法は違うものなのか?」

「基本は同じはず。ただ、魔力に内蔵される魔素の構造式が体内に取り込まれた瞬間に別のものに変換されるから精霊が行使するとちょっと特別な魔力放出の形式に」

「……つまり?」

「水を口に含んだ時、俺らは水のまま。精霊は酒になる感じ。吐くときも同じ。俺らが吐いても水だけど、精霊が吐くのはお酒」

「もっといい例え方はなかったのか」

 だが合点がいった。酒に水を混ぜても少し薄まるだけでしかないが、水に酒をたらせばそれは酒になってしまう。そうなると変質した魔力が予想外の影響をするのだろう。水だと思って飲んだら酒だった、のような。

 そのあたりもわかっていて、それでもサイカに魔力を供給していたはずだ。当時の竜族と魔法族がどこまで精霊に理解があったかは分からないが、拒否していないところを見ると把握しきれていなかった可能性は大いにある。