「アマルティアはサイカに戻ってきてほしかった。そのために禁号魔法を使おうとして、その依り代……代わりになる入れ物にシン様を使おうとした。そんなことしても愛してたサイカと‘’同じもの‘’が戻ってくるわけじゃねーんだけどなっ」

「その禁号魔法というのは、どういうものなんだ」

「一番弱い第一魔法だと更地にする魔法なんだけどなっ、代わりに土地の広さの指定があるぜ! だからちょっと庭作るとかには仕えねー感じっ」

「広さ? どのくらいだ?」

「東に島国あるだろ? あれ、シャハン一つ分くらい」

 国を一つ犠牲にして更地にする魔法なんてどう使うんだと思ったが、まあ旧世界の開拓時代はそういうのが必要だったのだろうし広範囲を一気にいじれたほうが都合がよかったのかもしれない。

 価値観の違いによる副作用の大きさというのもあるのだろうと思うと残っている古代魔法を使おうとしたこと自体はそんなに責められないような気がした。手段が間違っていても、それを使えるものと判断したら手を出すのは当然のような気がする。欲というのはそんなものだ。

「第六魔法は体や魂をいじくりまわす魔法だから、人類種の倫理観で行くと蘇生よりゾンビ? とか人造人間のがちかいかもなっ。代償は、一人分の体と魂、あと事実や記憶の改変だぜっ、理を捻じ曲げるんだからまあそうなるよなっ」

 どうしてそうなるのかを知っているかと言えば、上位三種にはその影響がでないからだという。つくづく二翼種と精霊種はその強さが神がかっているなと思わされる。生きている次元の理が違うとそういうことになるのだろう。

 精霊の記憶にのこるその副作用は、記憶ののぞき込みによってほかの精霊に伝わっていく。精霊種と交流のある竜族と魔法族はそれをごく普通に知っていたんだろう。

 精霊ののぞき込みの性質をシンは知らなかったようだが、無理もない。なんせ十八年間しかシンはまともに時間の中に身を置いていないし、身近にいたシイもアムもイーズもアールも意図的にそのことを隠していたようだ。

 あなたは天才ね。

 そう呼びかけたのがシンの母親だったのであれば、もし禁号魔法とやらが行使されていたのであれば、それによるアールの言う副作用が起きていたのであればシンの記憶は