「出会って、結婚して、死ぬまで大体十三年。竜族にしたら、ありえねー早さだなっ。……亜種の一言でしか説明できないってのも、俺はなんか納得いかねーんだけどな」

 竜族は一生一対の番しか持たない、とアムが言う。死別しても、その後別の個体と結ばれることはないそうだ。それは百年単位であろうと変わらない。それだけ本来は寿命の長い生き物のはずなのに、サイカの享年はたったの二十九。時が止まっているとはいえ、シンが九七一歳も年上ではないかと呟けば笑いながらどうしていいかわからないような顔をしていた。

「きっとシン様が覚えてない理由も、今から話すことの中にあるはずだべ。だからそれを、見極めてほしいんだべな。辛いことかも、知れないけど」

「大丈夫だよ。過ぎてしまったことで、わざわざ理由を問うほど俺は弱くないつもりだ。それにほら、ジオルグもみんなもいるし、平気だよ」

 シンが笑う。いつもの、心底楽しそうな本当の顔で。アムがほっとしたように「じゃあ続けるべ」と口を開いた。