三人が心配そうにこちらを見ている。シンを見れば泣いているし、自分も顔がやたら冷たいと感じて手の甲で強めにこすった。

 シンが最初に言っていた、祝福されていなかったという話はどこにもなかった。どうしてそう思っていたのかはわからないが、シイの記憶に沿った三人の話はまるで映像のようにすとんと心に落ちてきた。

 見えないし、聞こえるわけでもないのに、すぐそこにまるでシイとサイカがいるかのような錯覚を覚えるほど。

「シン様」

「ん」

「シン様は、愛されてたんだべ。みんなから」

「……花壇の、こと、思い出したよ。どうして忘れてたんだろう。花の種は、祖母と一緒に埋めたんだ、父方の。咲いた花を、祖父が誉めてくれて、母さんの部屋で、花瓶に挿してもらった。見てたはずなんだ、全部。なのに俺は」

 これだけ愛されていたシンが「罪の子」や「天災」などと不名誉で心無い呼ばれ方をしていた理由がわからない。シンの記憶よりも、精霊の記憶のほうが信頼できそうだから単に忘れていたことや勘違いがあったとして、そんなに正反対の出来事になりうるものだろうか。

 精霊は嘘をつかない。

 シイとサイカが、特別な感情を持っていたことは話を聞いているだけで何となくわかるし、それは記憶をのぞける三人のほうが感じるところだろう。とはいえ性質である「加害をしない」「戦わない」「嘘をつかない」という部分まで捻じ曲げているとは考えにくい。

 精霊を愛している話、はあるといえばある。だがピグマリオンのようなものに近い。こんな風に、互いの生活に根付いて死ぬ時までそばに居てという話は聞いたことがなかった。

「その、精霊が他種族と懇意にするというのはよくあることなのか。聞いていると明らかに互いが友人のそれではないだろう」

「普通はないよねええ、だって精霊には個人に恋をするって感情がないからああ……同族に対してもだけど、慈しむ、みたいな気持ちのが表現としては正しいかもねええ」

 うんうん、と三人が頷いた。やはりこのシイという精霊は少々ばかり特別なようだ。

 シイが竜族だったらよかったのに、というサイカのセリフがすべてなのだろう。精霊はどんな姿にもなれるようだから容姿はあまり関係なくて、だからこそそばにいることを望んで受け入れてそうしていたに違いない。

 アマルティアがそれを知っていたかは定かではないが、夫婦ではないなりに、シイにもサイカにも思うところはあったはずだ。

 そばにいるだけの関係。それはどういう感情だったのだろう。