「精霊にとって千年というのは、もしかしたら俺たちにとっての数日くらいでしかないのかもしれないけど」

 シンの声に耳を傾ける。竜にとっての千年だって人間にしてみれば数年くらいのもんじゃないのかという気持ちを抑える。竜は精霊よりも長命だともいうが、シン曰くダブルは長生きできないらしいしシンが外に居たときの体感速度とここでは違いがあるのだろうか。

 精霊種である三人は今もまだこの世界の流れの中にその身を置いている。

 彼らは老いていく。そしていつか、シンを置いていく。

「知りたいんだ、俺は。たった数日でも、みんなが見てきた世界の一端を。ジオルグと一緒に」

 困ったような空気を醸し出す三人をじっと見つめる。

 数分続けて最初に折れたのはイーズだった。

「もうさああ、シン様をずうっとここに留めるのは……無理なんだねええ」

「イーズ……」

「あのねえ、約束したのおお。シン様を何があっても絶対守るってええ」

「誰とだ?」

「シイだよお。シイはねえ、最初にここに居た精霊なのおお」

 イーズで四人目、というのを聞いたのを思い出す。

「シイが……」

「そのシイというのは、どういう……?」

 シンが泣きそうな顔で重々しく口を開く。

「シイは、俺の罪を知ってた精霊だよ」