「あっ、あのねえ、意地悪で言ってるんじゃないのお。どうしてもって言うなら仕方ないと思うしい、でも、でもねえ、イーズたちは、シン様にもジオルグにも、痛いとか悲しいとか、思ってほしくなくてえ」
「お前たち、もしかして本当はなにか知ってるの?」
シンがそう問うと、ギックゥ! と示し合わせたかのように肩を跳ねさせた。知っているようだが、言いたくないことでもあるらしい。聞いたこともなかったのだろうが、初耳だとシンはややあって表情を変えた。
あわあわとアールが口を開く。
「ううううう、嘘ついてるわけじゃないんだぜっ!? ただ、その、約束ごとがあって! あっ、これ内緒だったか!? あーもう! えーとだから、そう! 意地悪な感情で邪魔したいわけじゃないんだ!」
「わかったわかった、とりあえず落ち着け」
悪意がないのは話していればなんとなくわかる。約束、と言ったが彼らが約束するような相手はあいにくとここにはいない。外に出たときか、あるいはそもそも入ってくる前にそういう話をしてるのか、どちらにしても口を割ってもらわないことには何もできないだろう。
仕方がないと思う、とイーズは言うけど今の状態で山頂を目指したら三人は確実に邪魔をしてくる。それだけはジオルグもシンも同じことを思っているようで困った顔をした。
「俺がどうこうじゃなくて、シンの身に何か起きるんだろう」
「え、なんでそう思うのさ」
「約束らしいからな、お前に関することしかないだろう」
「うええ、アム、イーズ、もう話しちゃったほうがいいんじゃねえのっ……」
「だだ、だめだよお、き、気持ちはわかるけどお……」
「二人とも、それ内緒話のつもりなら声が大きすぎるべ」
呆れたようにアムが言う。それを聞いて笑うシンを見てすこしだけほっとした。体調はもう問題なさそうだ。服装やその顔立ちのせいもあって、女に見えるのでシンがぐったりしていると死んでしまわないかとはらはらする。
口を開けば立派に男の声なので少々混乱するが、そうでなくても自分なんかより何百倍も丈夫なのだろうとジオルグはため息をついた。どれだけ鍛えても、種族の壁は越えられない。うらやましくも、悔しくもある。