「お前のせいで!」


 母親が竜、父親が魔法使い。生まれつき人の子の大人くらいの知性を持つ身で生まれてきた自分は最初から周りの大人の声がよく聞こえていた。

 竜と聞いてジオルグはどんな想像する? 身の丈がこーんな大きなトカゲみたいなもの? そうだね、それも間違ってないよ。でもやっぱり不便だからさ、魔法が使えるっていうのは人間の科学と同じで当たり前に生活を便利にするために使うものなんだよね。そうそう、姿を変えたりとか。今の俺みたいに。

 俺の顔は、母親に似ている。この透明な羽も角も、全部母親譲り。肌が白いのと髪が黒いのは父親譲り。目は二人の色が混ざってる。赤が父親、金は母親。

 だから傍目に見てもすぐわかる。自分がそのふたりのこどもなんだって。竜と魔法使いの子供はみんな同じように遺伝する。顔や角は竜に、肌と髪は魔法使いに、目は二人を混ぜた色に。ハーフ同士の子供? 知らないね。だってダブルは長生きしないから。

 二種族の交流の歴史はジオルグが言っていた通りでそんなに間違いない。それぞれが頭もいいし、力も強いんだから同盟関係のほうが何事もうまくいくに決まってる。とくにこんな島国で、身内よりも外を警戒していればね。そんなのはどの立場から見てもごく当然のことだった。

 竜と魔法使いの婚姻も、言ってしまえば異種族というより他国の人間と結婚する感覚のが近かったんじゃないかと思う。昔からあるよ、隣国の王子様がお姫様に恋するような安っぽい寝物語とか。

 愛し合うことは反対されてなかった。ただ、血の相性とでもいえばいいのか、半分ずつだとどうも長生きできないことが分かった。親もそう。産むときに子供にほとんどの魔力を吸われるから、ほぼ確実に母親が死ぬ。博打みたいな子育て過ぎるから結婚はしても子供は持たないなんて夫婦も良くいたみたいだ。だって本来子供ってのは種の繁栄が根底にあるだろう。

 親も殺すし、長生きもしない生き物なんて居たって仕方ないんだ。可愛いと思うだけじゃ生きていけないからね。それか子供だけは同じ種同士の夫婦が生んで、あとは養子に出すとかね。人間社会でも珍しいことじゃないだろ。

 俺の母親は霧氷竜で、いわゆるお姫様だった。血統とかじゃなくて、最近の言葉は良く知らないけど、結婚を申し込まれる数がやたらと多いような、そういう意味だよ。

 翻って父親はごく普通の魔法使いだよ。特別な力はない。代わりに劣等でもない、本当の意味で普通の魔法使い。ああ、でも薬学と医術においては器用な人だったって聞いたような気もするね。あんまり覚えてないけど。