「ありがとな」

「俺はべつになにも」

「ううん、私たちだけじゃなくてええ、シン様にもおお。ジオルグが来てからシン様、毎日すううっごく楽しそうなんだよおお」

「アムたちはシン様が好きだし、シン様もアムたちを大事にしてくれるけど、アムたちは友達じゃないんだべ」

 種族同士が、あるいはその生き方が交わらなければ、友達という呼び方は精霊や竜にとっては適さないのかもしれない。そう呼びたくても呼べないのか、そう呼ぶべきではないのか、なにか理由があるのだとしてもそれは彼らにとっての常識だったり、大切なものだったりするのだろう。完全に理解はできないかもしれないが、寄り添うくらいならできるはずだ。

「じゃあ、仲間でいいんじゃないか」

「それってええ、友達とは違うのおお?」

「そうだな、仲間っていうのは……友達は大切にしたい一人かもしれないが、仲間というのは生きることや、過ごす時間を共に高める相手をそう呼ぶんじゃないのか」

「仲間、仲間かあ。人類種って、たくさん言葉があるんだなっ」

 顔がないはずのアールが笑ったように見えた。この三人は人間でも動物でもないし、表情もよくわからなかったはずなのに今ではなんとなくそれもわかるようになった。明確に見分けるポイント、なんてものは残念ながらないらしく、シンもフィーリングだと言っているが、それでも十分わかるのだ。

 自分を受け入れてくれていることも、自分を信用していろんな感情を投げつけてくることも。

「仲間だってええ! いいねええ、ちゃんと名前がつけられるんだねええ」

「精霊種にはなじみがないかもしれないな、不躾なことをしていないといいのだが」

「そんなことないべ! ジオルグは詳しくないのかもしれないけど」

 アムもイーズも、最初は表情なんてわからなかったけど、今はわかる。にんまりといたずらっぽい顔をして嬉しそうに言うのだ。

「精霊種は、本当は他種族のことが大好きなんだべ」