シンは相変わらず気さくで面白いやつだった。美しいが青年だとわかる顔も、氷のような羽と角も、真っ黒なワンピースも、見慣れてくれば日常に同化する。飽きたとは少々違うが美人は三日で飽きるという言葉の本質を見たような気がした。飽きるというか、見慣れる。

シンは時折酷く不機嫌そうな、だるそうな顔をする。本人曰く、具合が悪いような感じがして、体が重く、眠く、思ったように体も動かず、魔法も使えないらしい。月の満ち欠けみたいだと言えば周期があるわけじゃないというので余計に困っているようだった。

「ねええ、今日のごはんはなにがいいかなああ?」

「ジオルグなにが食いたいっ? シン様、今日は眠いからスープだけでいいんだってさ」

「材料があるならたまには俺がやろう。お前たち、必要ないだけで食べることはできるんだろう?」

「えっ! いいんだべか?」

「……なにかおかしなこと言ったか?」

 精霊たちが驚いたように顔を見合わせる。出来ることをいつまでも誰かに丸投げにするのも、と思っただけだし具合の悪い日のシンは起き上がるのも辛そうだ。だったら三人にあの星空スープとは別に何かを作ろうと思ったのもごく自然な流れと言えた。

「だってよー。俺ら普段、出来事しか食ってねえしさ、あんま人間っぽくないし」

「容姿や食事の話か? それと俺がお前らに飯を振舞うのになんか関係があるのか?」

 再度三人は顔を見合わせてぶはっと吹き出し、転げるように笑いだす。なんなんだ、とジオルグが眉根を寄せるとイーズが「ごめんってええ、あはははは」といいながら背中をばしばし叩いてきた。肉球がふかふかとクッションになって全く痛くない。