「なんでもできるのであれば、お前たちは北の領域から出られるんじゃないのか?」
「精霊ならな! 俺らは成れの果てだからそんなことできないよ」
「ああ、そうだ、その成れの果てというのも、なんなんだそれは」
この世の生き物のすべてが肉体と魂をそれぞれ持っている。人間は片方ずつ操作ができないから片方がだめになればそれはすなわち「終わり」を意味するが精霊は片方ずつ操作ができるのでどちらかが消えてもまだそれは死ではない。
魂が消えれば体が残るし、体が朽ちても魂は残る。三人は「体が先に遺失した状態」であるらしく今の姿は魂の性質を表したものだそうだ。
「魂が消えたら、人間くらいの力しかない生き物になるんだ。見た目が人で、魔法とかは使えないってことだな。ただそれまで何百年も生きてるから人間になったとしても人間社会にはなじめない別の生き物だけど」
「わたしたちはああ、魂が残ってるからあ……精霊っぽいことはできるけどおお、体の、殻が固くないんだよねええ。だからあ結界抜ける時のお衝撃に耐えられないんだああ」
なるほどなと思うので素直に頷く。どういう理由で三人がここにいるかは知らないが、肉体があれば出入りできるというのであればシンのいう、白翼、黒翼、精霊は北の領域でも歳をとるというのが納得できる。それだけ特別な存在なのだろう。
「三人はどうしてここに居るんだ?」
「俺らはね、元々人間でいう大陸の一番北の国にいたんだ」