アムたちも詳しくは知らないらしい白翼種だが、そもそも白翼種と黒翼種についてはなにもわからないのでいいとして、その白翼種の始祖によって「出来事」が作られたらしい。つまり精霊より出来事のほうが先だった。

 出来事が大気中のエネルギー(このエネルギーがなにかも具体的にはわからないらしい)と結びついて精霊の形になる。白翼種のもとの姿はわからないが、人類種が現れてからは人類種に寄せた姿絵が多かったり、人類種があちこちで生活しているから精霊の姿は人型になるらしい。要はよく目に着くものの姿かたちを真似ているだけで精霊そのものに決まった形はないようだ。

 精霊種たちが自身を精霊種だと認識するころには竜族と魔法族と人類種がすでにいたらしい。文献でもその三種族は大体同時期に発生したとあるからそんなに間違っていないのだろう。

では精霊はなにができるのか。

有体に言うと、何でもできる。

いわく、白翼と黒翼は天父という神のような存在がまだ上にいて、それによって活動の制限があるらしい。だが白翼によって作られた精霊は天父の制限を受けず、また白翼より大層な力は持っていないので特に決まり事というのがない。

だから毎日晴天にしておくことも、異種族を滅ぼす大嵐にすることも、死者を蘇らすこともできる。が、何もしない。何でもできるが何もしないのが精霊だ。つまり制限されないのは彼らの存在が何かを害する可能性がないからだ。

 何でもできるがなにもせず、ただ存在しているのが精霊という存在。だがどんなに弱い個体でも人間からすればすさまじいエネルギーの塊ゆえ、捕獲されそうになったり一つの土地から姿を消したりというのを繰り返してきたらしい。そこまでされても人類種に反撃しなかったのはその必要がなかったから……というがそのあたりの倫理観などは人間であるジオルグにはよくわからなかった。