「みんな、今日からここに住むジオルグだよ。ジオルグ、彼らは精霊の成れの果てだ」

「成れの、果て……?」

「アムだべー!」

「イーズだよおう」

「俺アール! よろしくな!」

 精霊は竜と魔法使いよりさらに記述が少ない。かつては魔法使いとは別に精霊術師がいたそうだが、それだって本当かどうか怪しいものだ。しかもさっきシンはこの山のことを精霊の墓場だと言っていたはず。何が、どうなっているんだとジオルグは頭を抱えたくなった。

「俺ジオルグと話があるから部屋に行くね。みんなお茶をいれてきてくれる?」

「「「はーいっ!」」」

 きゃあきゃあと笑いながら三人……人でいいのかわからないが、は左の廊下の奥のほうへと駆けていく。シンに呼ばれ階段をあがった先にもずらりと扉がならんでいてそのうちの一つにシンは手をかける。

 どこにでもある建物と同じ。天井と、廊下と、扉、照明。外観も内装も、貴族の邸や美術館のようなつくりだけれどなにもおかしいところはない。

 いや、一つだけおかしいところがある。おかしい、というか足りないだけだが。

 窓がない。

 廊下も、部屋の中も、こんなに大きな邸なら外から見たって窓があるのがわかる。実際外から見たときは窓があった。なのに今、中からこうして見てみると、シンの入ったこの部屋は数十人が入っても余裕な広さなのに窓だけがどこにもない。

 すすめられた対面のソファに腰を掛けると、まるで昼寝中の猫の腹のように柔らかかった。

「さて、とりあえずしばらく一緒に暮らすことになったからよろしく。この家のルールとかもあるけど、それは後にするかあ」

「先になにか話すことがあるのか?」

「何言ってんだよ、ジオルグの話を先に聞くんじゃん」

 当然のようにシンがそう言った。