パレードを見送り、テラスのお客さんたちも動き出そうとしている。
僕たちは次のアトラクションの時間にまだ余裕があって、ご飯のあとは夜に行われるショーの抽選に行くらしい。

「パレードやっぱり可愛かった〜。何回見ても可愛い。……それにしても、お腹いっぱいになっちゃったなぁ。学くん、これちょっと貰ってよ」

セットで頼んでいたポテトをそっと差し出してきて、僕は遠慮なくそれを頂く。
間食をそれほどしているわけでもないのに、最近はすぐに満腹になるんだよな、と陽奈子が呟きながら行動の行方を考えている。

やがて僕たちも食事を終えて動き出す。
人の波に乗って目指すアトラクションへの道は10分少々だけれど、整備された花壇や作り込まれた映画のような世界には圧倒される。陽奈子は度々立ち止まっては風景写真を撮ったりしている。

「すみませーん」
「はい?」
「写真撮ってもらえますかー?」
「いいですよ」

と、カメラを受け取って構えたものの扱い方がよくわからなくて慌てる。
けれど、すぐにそれに気づいた陽奈子がさっと変わってくれた。さすが、慣れてる。

「はい、チーズ!もう一枚撮っておきますね〜。ハイ、撮りまーす」
「ありがとうございますー」
「写真確認してくださいね」
「あ、大丈夫そうです!ありがとうございます。お姉さんたちも良かったら撮りましょうか?」

写真を確認してもらったあとそう言われて、お願いする。
僕らは自分達を写真に収めるような習慣はあまり無かったから新鮮な気持ちだ。なんて、呑気にしていたら背後に気配があって振り向くと、驚いたことにリスのキャラクターが立っていた。
どうやら一緒に画角に収まろうとしているらしく、ポーズをとっている。
奇しくもそれは陽奈子の一番のお気に入りのキャラクターで、びっくりしながら大はしゃぎしている。
キャラクターと戯れたあとは、すかさず先程の子たちと交代して写真を撮りあっていた。
「手慣れてる感がすごい」
「なにが?」
「カメラのやり取りとか。キャラクターなんて喋らないのに」
「違うのよ、学くん。あの子達は言葉はなくても雄弁にお話してるのよ」

すごく真剣に訴えるから、多分、そういうことなんだろう。
通じるものがあるらしい。

「さて、気を取り直してアトラクションいこ!結構時間くっちゃったからちょっと急がないと」
「うん」

目的のアトラクションはジェットコースタータイプではなくて、コースターに乗りながらゆっくりと物語をなぞるタイプのものらしい。
子供向けの乗り物かと思いきや、これが以外にも楽しい。
前へ進んだと思ったら、後ろへ。かと思えば、ぐいんと回って曲線を描き。
縦横無尽に行き交うコースターがよくもまあぶつからないものだと思いながら、すれ違うコースターに乗る人々の顔にも笑顔が見える。
幼い頃に見た映画を記憶の隅に思い出しながらアトラクションを楽しんだ。