村の家々は倒壊し、無残にも材木の山になっていた。

所々から黒煙が昇り、襲撃を受けてから、まだ間もない事がわかる。

倒壊した家々に沈み始めた夕陽の光が当たる。

影が伸びて、倒壊した姿を際立たせる。

空は、青空から黄昏に変わる途中だった。

夕陽に向かって、色調が段階的に変化している。

村人の多くが、倒壊した家の下敷きになり、意識が無い。

崩れた門の近くに、母子が横たわっている。

母は最後まで子供を守ったのだろう。

子供に覆い被さるように母が倒れている。

ノキルは、奥歯を噛み締める。

ノキルは、その母子を横目に、馬に乗ったまま、村を歩く。

馬の歩く、ひずめの音が、異様に響く。

息のある者を目視で探していく。

しかし、誰一人として、動く者は居ない。

この村で一番賑わう広場に着いた。

広場も材木の山と化していた。

出店も朽ちて、果物などが散乱している。

物を捨てられたように、村人が、ごろごろと倒れている。

ノキルは考えていた。

敵は少人数だ。

大勢である場合、踏み歩かれて、果物などが原型を留めているはずがない。

アルス様、お一人なのか?

確かに、剣技に長け、弓技にも長けていた。

ノキルは、アルス様から教授を頂いていた頃の記憶を思い出していた。