全てを手放して瞳を閉じた瞬間
頭の中に無数のデータが
挿入されて、
それと同時にわたしの爪先から
腰、双房の頂きに至るまで
泡立つ様な流れが走る。

その初めての感覚に脳の奥が
快楽を拾う。

「はっ、はぁ、、あぁ、!っ」

これは!わたしのデータじゃ
ない!

ズクリとわたしの首元から
涎液でヌラリとする口を外して
カンジが愛おしげに
わたしの髪を遊ぶ。

「喰い破ると思ったか?アヤカ」

「カンジ、何をしたの、」

「俺の小鳥はもう飛び方を
知っただろう?一緒にイクか」

わたしは、
目を見開いて次に、すぐ
窓のカーテンを閉めた。
これが、答え。

アーダマ帝系旧ヴンパイア貴族。

生気だけでなく、
獲物の脳内情報さえ吸い尽くす。
それだけだと
ハウワ母星人
は思っていたけど、、

「インプットも可能なのね、」

わたしがカンジの耳珠に呟くと
今度は薄い下腹から臍を
ゆっくりと
指でなぞり上げられる。

「蓄積した術を全て孕ませて
血を繋ぐ事が成せる様にな。」

それだけで
幾夜の逢瀬を重ねて
覚えた感触が脊髄を登ってくる。

もう、そんな風に
カンジに子宮ごと溺れ沈む
わたしの心は
条件反射に
最初から、
決まっていた。

それさえカンジは
わたしの首元に
熱い牙を突き立てた時に
解っていたかに
焔を
瞳孔に秘しながら
カーテンを握り締めた腕に
舌を這わせる。

「アヤカのデータで
漸く、 ファーストアップルの
見当が ついたよ、、」

カンジの吐息だけでガクガクと
わたしの肢体は不様に
湿り気を帯びて
揺れるのを、
カンジは目を細めて
見定めながら

「 たが、、帝国の岸辺に戻る
忠誠をアヤカがまんまと
塗り替えた、、アヤカ、、」

白々と夜が明けつつ変わる
外の空気が立ち込める

「初めてから魅了された、、
番の肢体手に入れるなら
禁忌を冒しても未開の海に
出るのも、、悪くない。」

「俺が船乗りじゃ、嫌か。
アヤカの最果ての海、その
向こうまで イカないか、なあ」

カーテンの
隙間から零れる光は何の光?
そんな事を何故か考えながら
カンジの言葉を
生まれたての子鹿みたいになり
つつ
ボーッ聞いていた、わたし。
窓は東むき。

「カンジ、太陽が、昇る、」

「俺は、蒼空から、時空ごと
離れ、アヤカといる時が1番、
俺らしく、欲のままなんだよ」

そう耳から口に言葉を流し込み
カンジは、
わたしの口を塞いだまま、
大きく右腕を振りかぶって、
後ろの窓ガラスに拳を
打ち付けた!

ビシリと亀裂が入るガラスが
直ぐに砕けて強烈な刃形に
穴を開くと、
カンジはわたしの口内を
蹂躙しながら、
そのまま

地上50階のホテルから上空に
ダイブする。

思えば、カンジが
ホテルの浴槽を座標にしている
ならば
追っ手の出口が座標になる。

『どうするの、、』

頭にそう意識すれば、
カンジの意識が口から

『すぐに、強奪だろ?』

流れ込んだ。

帝系や母星、
彼らの追っ手は凄まじい。
でも、
わたしを補食するカンジの
そんな野獣瞳が何千何億と
わたしを戦慄させ、
身体を駆けめぐる。

『一緒にイクだろ?アヤカ?』
『一緒にイク、カンジ』

帝系でも母星でもなく
わたし達が、この旧消滅地球ごと
道連れに
運命を変えることになる。

ファーストアップルを手にする
とはそういう事だ。

『たとえ、彼らの憎しみで、
わたしの命が終えられても、
あなたを失うよりいいもの』

『もう、カンジとは?』

もうすぐ、地上に落ちる。

『カンジもアヤカも、偽名でしょ
、それに 母星を捨てたら、
わたしは名無しだわ。』

太陽の光が、落下する
身体にささる感覚は
新しく洗礼を受けたも同様で、
わたしを抱く男も
そう感じているだろう。

『今日からは 、、』

罪深い
道連れの契約を交わしながら
わたし達は
互いに『楽園』を、目指して
落ちていく。