乗合馬車が街から見えない場所まで移動し、やっと聖者コールが聞こえなくなった。
診察料や薬代だって貰っているし、聖者だなんて呼ばれるような事はしていないというのに。
街の人たちが気を遣ってくれたのか、御者のオジサンを除いて乗客は俺たち三人だけなので、やっと寛げる。
一先ず、ララさんから手渡された小さな革袋を開けてみると、
「あれ? 見た事が無い硬貨だ」
黒い硬貨が三枚入っていた。
白金貨や金貨、銀貨や銅貨くらいまでは良く見るけれど、これがその下の鉄貨という物だろうか。
日本円にすると、三十円くらいだと思うけど、街を立てなおすのにお金が必要だろうし、俺は金儲けの為にやった訳じゃ無いしね。
とりあえず袋に入れておこうとした所で、
「リュージさん! それ、黒金貨じゃないですかっ!」
アーニャが大きな声を上げる。
「知ってるの?」
「当然ですよっ! 世界共通硬貨の黒金貨ですよ! 普通の金貨百枚分の価値です」
「これ、鉄貨じゃないの!? というか、一番高額なのって、白金貨じゃなかったの?」
「鉄貨がそんな立派な訳無いじゃないですか! 白金貨も十分高額ですけど、黒金貨はその十倍ですってば!」
という事は、黒金貨三枚で三百万円!?
いやいや、流石にこれは貰い過ぎだよっ!
返さなきゃ……と思っていると、
「お兄さん。街を救った感謝の気持ちなんだから、返すのは失礼じゃないかなー?」
セシルから待ったがかかる。
けど、エルフの王女様であるセシルからすれば、三百万円って大した事がないかもしれないけど、元ブラック企業のサラリーマンとしては、一年身を粉にして働いて、ようやく貰える額なんだよ。
とはいえ、セシルの意見も理解出来るので、有り難く頂戴する事にした。
しかし、異世界転移初日に貰ったお金と、ポーションを売ったお金に、この黒金貨。そこから食費などを差し引いても、日本円換算で六百万円くらいある。
収入も沢山あったけれど、家賃というか、宿代が全く掛からないから支出も少ないから、このままだと溜まる一方ではないだろうか。
……あ、セシルたちの服を買うつもりだったのに、バタバタしていて忘れちゃってたよ。
次の街では、今度こそ服を買わなきゃ。
あとは、食料も買い足しておかないとね。
アーニャが上手くやり繰りしてくれているけれど、そろそろ冷蔵庫に入っている食材も少なくなってきているだろうし……と、考え事していると、
――グレーグンの街の危機を救った事により、貢献ポイントが付与されました――
どこかで聞いた事のある声が頭の中で響く。
――貢献ポイントが百ポイント付与されました。貢献ポイントが一定値を超えたので、城魔法の改修及び増築が行えます。リストから一つ選んでください――
一方的に説明がなされた後、スキルで見かける銀色の枠が現れた。
『城魔法、改修及び増築リスト。
拡大又は機能UP:診察室・調剤室・待合室・リビング・キッチン・お風呂
部屋数追加 :三階
増築 :屋根裏』
「マジで!? セシル、アーニャ! これを見て!」
突然現れた城魔法のグレードアップに驚きながら、慌てて二人を呼ぶ。
部屋の拡大や追加は分かるけど、機能UPってなんだ? リビングの機能UPって、何がどうなるんだよっ!
「お兄さん、突然どうかしたの?」
「いや、セシル。これだよ、これ。見てよ」
「何を?」
「何って、この銀色の……って、俺にしか見えないのか?」
アーニャに同じ事を聞いてみても、「何か幻覚が見えているのですか?」と心配されてしまった。
仕方が無いので、突如聞こえてきた話を伝えてみると、
「なるほどねー。噂には聞いた事があるよ。覚醒っていって、突然強力なスキルが使えるようになるんだってー」
「そうなんですね。リュージさん、凄いです」
二人が喜び、俺を持ち上げてくれるんだけど、覚醒とは少し違う気がするのだが。
とはいえ、これ以上謎の声の話をしても、また幻覚とか言われてしまうので、一先ず三人で生活している城魔法の、どれをグレードアップさせるかを話し合う事にした。
診察料や薬代だって貰っているし、聖者だなんて呼ばれるような事はしていないというのに。
街の人たちが気を遣ってくれたのか、御者のオジサンを除いて乗客は俺たち三人だけなので、やっと寛げる。
一先ず、ララさんから手渡された小さな革袋を開けてみると、
「あれ? 見た事が無い硬貨だ」
黒い硬貨が三枚入っていた。
白金貨や金貨、銀貨や銅貨くらいまでは良く見るけれど、これがその下の鉄貨という物だろうか。
日本円にすると、三十円くらいだと思うけど、街を立てなおすのにお金が必要だろうし、俺は金儲けの為にやった訳じゃ無いしね。
とりあえず袋に入れておこうとした所で、
「リュージさん! それ、黒金貨じゃないですかっ!」
アーニャが大きな声を上げる。
「知ってるの?」
「当然ですよっ! 世界共通硬貨の黒金貨ですよ! 普通の金貨百枚分の価値です」
「これ、鉄貨じゃないの!? というか、一番高額なのって、白金貨じゃなかったの?」
「鉄貨がそんな立派な訳無いじゃないですか! 白金貨も十分高額ですけど、黒金貨はその十倍ですってば!」
という事は、黒金貨三枚で三百万円!?
いやいや、流石にこれは貰い過ぎだよっ!
返さなきゃ……と思っていると、
「お兄さん。街を救った感謝の気持ちなんだから、返すのは失礼じゃないかなー?」
セシルから待ったがかかる。
けど、エルフの王女様であるセシルからすれば、三百万円って大した事がないかもしれないけど、元ブラック企業のサラリーマンとしては、一年身を粉にして働いて、ようやく貰える額なんだよ。
とはいえ、セシルの意見も理解出来るので、有り難く頂戴する事にした。
しかし、異世界転移初日に貰ったお金と、ポーションを売ったお金に、この黒金貨。そこから食費などを差し引いても、日本円換算で六百万円くらいある。
収入も沢山あったけれど、家賃というか、宿代が全く掛からないから支出も少ないから、このままだと溜まる一方ではないだろうか。
……あ、セシルたちの服を買うつもりだったのに、バタバタしていて忘れちゃってたよ。
次の街では、今度こそ服を買わなきゃ。
あとは、食料も買い足しておかないとね。
アーニャが上手くやり繰りしてくれているけれど、そろそろ冷蔵庫に入っている食材も少なくなってきているだろうし……と、考え事していると、
――グレーグンの街の危機を救った事により、貢献ポイントが付与されました――
どこかで聞いた事のある声が頭の中で響く。
――貢献ポイントが百ポイント付与されました。貢献ポイントが一定値を超えたので、城魔法の改修及び増築が行えます。リストから一つ選んでください――
一方的に説明がなされた後、スキルで見かける銀色の枠が現れた。
『城魔法、改修及び増築リスト。
拡大又は機能UP:診察室・調剤室・待合室・リビング・キッチン・お風呂
部屋数追加 :三階
増築 :屋根裏』
「マジで!? セシル、アーニャ! これを見て!」
突然現れた城魔法のグレードアップに驚きながら、慌てて二人を呼ぶ。
部屋の拡大や追加は分かるけど、機能UPってなんだ? リビングの機能UPって、何がどうなるんだよっ!
「お兄さん、突然どうかしたの?」
「いや、セシル。これだよ、これ。見てよ」
「何を?」
「何って、この銀色の……って、俺にしか見えないのか?」
アーニャに同じ事を聞いてみても、「何か幻覚が見えているのですか?」と心配されてしまった。
仕方が無いので、突如聞こえてきた話を伝えてみると、
「なるほどねー。噂には聞いた事があるよ。覚醒っていって、突然強力なスキルが使えるようになるんだってー」
「そうなんですね。リュージさん、凄いです」
二人が喜び、俺を持ち上げてくれるんだけど、覚醒とは少し違う気がするのだが。
とはいえ、これ以上謎の声の話をしても、また幻覚とか言われてしまうので、一先ず三人で生活している城魔法の、どれをグレードアップさせるかを話し合う事にした。