「し、白魔法が使えないだと!? 異世界の回復術士を召喚したのではないのかっ!?」
「す、すみません。そのはずです。最高のクレリックと指定して召喚魔法を使用しました」
俺は今、大きな杖を持った変な格好のオッサン二人が騒ぐという、変な夢を見ている。
アレだ。こいつら、口だけのクソ上司とその部下っていう、俺にそっくりな状況なんだが、何も夢の中でも上司から怒られる光景を見せなくても良いのに。
早くこの夢、終わらないかなと思っていると、
「えーっと、貴方の名前は?」
部下の方が話し掛けてきた。
「俺? 斉藤竜司だけど」
「サイトウ=リュージ……あの、異世界で最高のクレリックなんですよね?」
「いや? ただのブラック企業のサラリーマンだが? 最高のクレリックって何の事だ? ……あ、斉藤クリニックなら、うちの実家だけど」
「えっ!?」
「えっ!?」
俺の言葉で目の前の男が突然固まる。
しかし、この夢は何だ? 夢のくせに、俺を差し置いてこそこそと内緒話なんてしやがって。
どうせ夢だからと聞き耳を立ててみると、
「……すみません。召喚時の指定を間違えたみたいです」
「……じゃあ、あの男は最高のクレリックではないという事なのか?」
「……はい。鑑定魔法で確認しましたが、持っているスキルも城魔法という意味不明なスキルしかありませんでした」
「……どうするんだ! 魔王討伐の旅に出た王女様の回復係は!」
どうやら、最高のクレリックと斉藤クリニックを間違えたらしい。……って、間違うか? というか間違えるなよ。まぁ夢に突っ込んでも仕方ないんだが。
「これは迷惑料って事で」
よく分からないままに謝られ、白い硬貨が数枚入った小袋を渡されると、オッサン二人に謎の部屋から追い出された。
とりあえず周囲を見渡してみると、ゲームやアニメの世界観みたいなレンガ造りの家が並び、剣を携え、鎧を着た人が見知らぬ街の中を歩いている。
……今度はコスプレの夢なのか?
だが、目の前を歩く緑色の鎧のキャラなんて見た事が無いし、ゲームに出てくるNPCの村娘Aみたいなコスプレをする人が沢山居る。
この見知らぬ街に、リアルに感じる気温や変な人を見るような突き刺さる視線。それから召喚魔法……って、まさか異世界とかに来ていたりしないよな?
いやいや、いくら俺がマンガやラノベを読みまくるからって、そんなWeb小説みたいな事はない……はず。無いよなっ!?
とりあえず、メチャクチャ金髪のお姉さんが居たので、
「すみません。ここって、何て言う地名ですか?」
「ん? カゼルスの街よ。黒髪なんて珍しいし、服装も変だけど……貴方は旅人さんかしら? とりあえず、その服は目立つから、そこの服屋さんで何か買った方が良いんじゃないかしら?」
話し掛けたら、全然知らない地名が出て来たっ!
しかも、どう見ても外国人なのに、思いっきり日本語で会話が出来てるっ!
ただのTシャツとジーパンにスニーカーが、変だって言われるし、一先ずアドバイスしてもらった通り服屋へ入ると、金髪の店員さんが俺の格好を珍しそうにジロジロと見てきて……やっぱり異世界?
「ありがとうございましたー!」
とりあえず適当に服と靴を見繕ってもらい、代金に白い硬貨を出すと、見た事の無い金貨や銀貨がお釣りとして帰って来た。
ほら、絶対にこれは異世界だって!
俺は高卒だから、ブラック企業だと分かって居ても辞めるに辞められない状態を見かねて、神様がのんびり過ごせって言ってくれているんだよ!
という訳で、異世界を観光しながら、のんびりスローライフだっ!
再びそこら辺の人に道を聞き、乗合馬車の停留所と呼ばれる場所へ行くと、
「すみません。田舎に行きたいんですけど、どれに乗れば良いですかね?」
チケット売り場みたいな小屋で、店員さんらしきお姉さんに尋ねてみた。
「田舎……ですか? でしたらモラト村でしょうか。のどかで綺麗な所で、ここから半日で着きます」
「じゃあ、そこでお願いします」
「分かりました。モラト村までは銀貨一枚となります。あちらにある、五番の馬車へ乗ってください」
指示された馬車へ乗り込み、コトコトと揺れる馬車の座席から、ぼーっと外を眺めていると、離れて行く街の奥に大きな城が見えた。
全く気付かなかったけど、どうやらさっき居た街は城下町だったらしい。
そう思った直後、
――スキルの修得条件を満たしましたので、城魔法「サモン」が使用可能になりました――
聞いた事のない声が頭に響く。
「えっ!?」
「ん? お兄さん。どうかしたのかい? 気分が悪いなら、外を見ていると良いよ」
思わず声が出てしまい、隣に座っていたオバさんが気を遣って席を変わってくれた。
というか今の声って、異世界ものによくある神様の声とか、システムメッセージとかっていう、アレなのか!?
城魔法「サモン」って、何だろう。
使用可能になったって言っているから、物凄く使ってみたい。
だけど、どんなスキルなのかも分からないので、馬車が村に着くまで我慢しようと思っていると、
「お兄さん。どうしたんだい? まだ気分が良くならないのかい?」
そわそわしてしまっていたのか、再びオバさんが声を掛けてきた。
「いえ、そういう訳ではないんですが……すみません。オバ……お姉さんは、魔法って何か使えますか?」
「私? まさか。白魔法は教会が、黒魔法は魔法学院が門外不出にしているからね。気分が悪いのは可哀そうだけど、回復魔法ならどこかの教会まで我慢しないとね」
なるほど。魔法を使えるのは一部の人だけだって事か。
とりあえず、城魔法の事は黙っておこう。
俺は異世界の風景を見ながら気持ちを落ち着かせ、ひたすら村へ到着するのを待つ事にした。
「す、すみません。そのはずです。最高のクレリックと指定して召喚魔法を使用しました」
俺は今、大きな杖を持った変な格好のオッサン二人が騒ぐという、変な夢を見ている。
アレだ。こいつら、口だけのクソ上司とその部下っていう、俺にそっくりな状況なんだが、何も夢の中でも上司から怒られる光景を見せなくても良いのに。
早くこの夢、終わらないかなと思っていると、
「えーっと、貴方の名前は?」
部下の方が話し掛けてきた。
「俺? 斉藤竜司だけど」
「サイトウ=リュージ……あの、異世界で最高のクレリックなんですよね?」
「いや? ただのブラック企業のサラリーマンだが? 最高のクレリックって何の事だ? ……あ、斉藤クリニックなら、うちの実家だけど」
「えっ!?」
「えっ!?」
俺の言葉で目の前の男が突然固まる。
しかし、この夢は何だ? 夢のくせに、俺を差し置いてこそこそと内緒話なんてしやがって。
どうせ夢だからと聞き耳を立ててみると、
「……すみません。召喚時の指定を間違えたみたいです」
「……じゃあ、あの男は最高のクレリックではないという事なのか?」
「……はい。鑑定魔法で確認しましたが、持っているスキルも城魔法という意味不明なスキルしかありませんでした」
「……どうするんだ! 魔王討伐の旅に出た王女様の回復係は!」
どうやら、最高のクレリックと斉藤クリニックを間違えたらしい。……って、間違うか? というか間違えるなよ。まぁ夢に突っ込んでも仕方ないんだが。
「これは迷惑料って事で」
よく分からないままに謝られ、白い硬貨が数枚入った小袋を渡されると、オッサン二人に謎の部屋から追い出された。
とりあえず周囲を見渡してみると、ゲームやアニメの世界観みたいなレンガ造りの家が並び、剣を携え、鎧を着た人が見知らぬ街の中を歩いている。
……今度はコスプレの夢なのか?
だが、目の前を歩く緑色の鎧のキャラなんて見た事が無いし、ゲームに出てくるNPCの村娘Aみたいなコスプレをする人が沢山居る。
この見知らぬ街に、リアルに感じる気温や変な人を見るような突き刺さる視線。それから召喚魔法……って、まさか異世界とかに来ていたりしないよな?
いやいや、いくら俺がマンガやラノベを読みまくるからって、そんなWeb小説みたいな事はない……はず。無いよなっ!?
とりあえず、メチャクチャ金髪のお姉さんが居たので、
「すみません。ここって、何て言う地名ですか?」
「ん? カゼルスの街よ。黒髪なんて珍しいし、服装も変だけど……貴方は旅人さんかしら? とりあえず、その服は目立つから、そこの服屋さんで何か買った方が良いんじゃないかしら?」
話し掛けたら、全然知らない地名が出て来たっ!
しかも、どう見ても外国人なのに、思いっきり日本語で会話が出来てるっ!
ただのTシャツとジーパンにスニーカーが、変だって言われるし、一先ずアドバイスしてもらった通り服屋へ入ると、金髪の店員さんが俺の格好を珍しそうにジロジロと見てきて……やっぱり異世界?
「ありがとうございましたー!」
とりあえず適当に服と靴を見繕ってもらい、代金に白い硬貨を出すと、見た事の無い金貨や銀貨がお釣りとして帰って来た。
ほら、絶対にこれは異世界だって!
俺は高卒だから、ブラック企業だと分かって居ても辞めるに辞められない状態を見かねて、神様がのんびり過ごせって言ってくれているんだよ!
という訳で、異世界を観光しながら、のんびりスローライフだっ!
再びそこら辺の人に道を聞き、乗合馬車の停留所と呼ばれる場所へ行くと、
「すみません。田舎に行きたいんですけど、どれに乗れば良いですかね?」
チケット売り場みたいな小屋で、店員さんらしきお姉さんに尋ねてみた。
「田舎……ですか? でしたらモラト村でしょうか。のどかで綺麗な所で、ここから半日で着きます」
「じゃあ、そこでお願いします」
「分かりました。モラト村までは銀貨一枚となります。あちらにある、五番の馬車へ乗ってください」
指示された馬車へ乗り込み、コトコトと揺れる馬車の座席から、ぼーっと外を眺めていると、離れて行く街の奥に大きな城が見えた。
全く気付かなかったけど、どうやらさっき居た街は城下町だったらしい。
そう思った直後、
――スキルの修得条件を満たしましたので、城魔法「サモン」が使用可能になりました――
聞いた事のない声が頭に響く。
「えっ!?」
「ん? お兄さん。どうかしたのかい? 気分が悪いなら、外を見ていると良いよ」
思わず声が出てしまい、隣に座っていたオバさんが気を遣って席を変わってくれた。
というか今の声って、異世界ものによくある神様の声とか、システムメッセージとかっていう、アレなのか!?
城魔法「サモン」って、何だろう。
使用可能になったって言っているから、物凄く使ってみたい。
だけど、どんなスキルなのかも分からないので、馬車が村に着くまで我慢しようと思っていると、
「お兄さん。どうしたんだい? まだ気分が良くならないのかい?」
そわそわしてしまっていたのか、再びオバさんが声を掛けてきた。
「いえ、そういう訳ではないんですが……すみません。オバ……お姉さんは、魔法って何か使えますか?」
「私? まさか。白魔法は教会が、黒魔法は魔法学院が門外不出にしているからね。気分が悪いのは可哀そうだけど、回復魔法ならどこかの教会まで我慢しないとね」
なるほど。魔法を使えるのは一部の人だけだって事か。
とりあえず、城魔法の事は黙っておこう。
俺は異世界の風景を見ながら気持ちを落ち着かせ、ひたすら村へ到着するのを待つ事にした。