その職場は人が足りないのか、すぐ採用になった。
最初は洗い物担当だったけど、頼まれて手伝った包丁さばきが上手と褒められて、今日はムネ肉なるものを切っていた。

「本当にいいんですか?いやー助かります」
俺より年下のチーフがまぶしい笑顔を見せて深く頭を下げる。

「息子がひとりで留守番をしていて、やっぱり少し不安で」

「別に早く帰ってもやることないから」

「でも急に僕の代わりに残業させる形になってしまって。本当にすいません」

今の時代はみんな大変だよな。

「仕事のできるいい方に入ってもらってよかったです」
爽やかにそう言ってチーフはもう一度頭を下げて、俺の前から去ってった。

いい方って初めて言われて、ちょっと照れながら肉を切る。

「確かに包丁の使い方が綺麗」
「病院食作らせるのもったいないわね」
後ろから手元を覗き込まれてまた褒められた。

この年齢になって、殺し方以外に褒められるのは初めてだ。

転職も

ちょっといいな。