マンションのベランダで、缶ビールのプルタブをプシュッと開ける。
夜の始まりの空はまだ黄昏がうっすら残っていて、一番星もかすんでる。
少しずつ街の灯りも輝き出して、太陽さんお疲れ様で夜が始まる。
いつもの景色で何も変わらない。
怒涛の一日だったのに
何も変わらない。
ベランダの手すりに身体を預け、火照った頬を冷たい缶に当てていたら拓ちゃんがやってきた。
「邪魔かな?」
「ううん」
拓ちゃんは缶酎ハイ片手に私の横に来て、缶を合わせて「乾杯」と小さく言った。
「お疲れさまでした」
私がそう言って頭を下げると拓ちゃんは笑って頭を下げる。
「かなり怒らせちゃったね」
「優奈さんの家族にも申し訳なかった」
「うちはいいよ」
家に帰ってから母親に電話をすると『スッキリした』と笑っていた。そして『大変ならいつでも別れなさい』とはっきり言ってくれる。私の母はバツ2だった。
放任主義だけど愛情は深く、拓ちゃんのことも大好きで気に入っていた。父も兄家族もサッパリとした人たちで、私の主張を一番に考えていてくれる。だから今回の事もそんなに気にしてないだろう。
問題は拓ちゃんの方だ。
「なんだかんだ言いながら、うちは父親が丸くおさめてくれるんだ」
「えっ?そうなの?」
あの影の薄そうなお父さんが?
私が驚くと拓ちゃんは私の肩を抱いて密着する。
拓ちゃんの匂いがする。安心できて一番好きな匂い。
夜の始まりの空はまだ黄昏がうっすら残っていて、一番星もかすんでる。
少しずつ街の灯りも輝き出して、太陽さんお疲れ様で夜が始まる。
いつもの景色で何も変わらない。
怒涛の一日だったのに
何も変わらない。
ベランダの手すりに身体を預け、火照った頬を冷たい缶に当てていたら拓ちゃんがやってきた。
「邪魔かな?」
「ううん」
拓ちゃんは缶酎ハイ片手に私の横に来て、缶を合わせて「乾杯」と小さく言った。
「お疲れさまでした」
私がそう言って頭を下げると拓ちゃんは笑って頭を下げる。
「かなり怒らせちゃったね」
「優奈さんの家族にも申し訳なかった」
「うちはいいよ」
家に帰ってから母親に電話をすると『スッキリした』と笑っていた。そして『大変ならいつでも別れなさい』とはっきり言ってくれる。私の母はバツ2だった。
放任主義だけど愛情は深く、拓ちゃんのことも大好きで気に入っていた。父も兄家族もサッパリとした人たちで、私の主張を一番に考えていてくれる。だから今回の事もそんなに気にしてないだろう。
問題は拓ちゃんの方だ。
「なんだかんだ言いながら、うちは父親が丸くおさめてくれるんだ」
「えっ?そうなの?」
あの影の薄そうなお父さんが?
私が驚くと拓ちゃんは私の肩を抱いて密着する。
拓ちゃんの匂いがする。安心できて一番好きな匂い。