思いのほか和やかに進み
拓ちゃんのお母さんとその兄嫁は「このお料理は味が薄い」とか「私ならもっと違うアレンジができる」とかリラックスしてきたのかそんな意見を出すようになり、そのたびに料理を運ぶ仲居さんに私が話しかけて注意をそらすのに気を使い、美味しい料理を味わえなかった。いや、今日は味わうのはあきらめよう。無事早く終わりますように。

拓ちゃんはいつもの笑顔で場を和ませ、両方の家族に気を使い話を弾ませる。
拓ちゃんのお母さんと兄嫁はだんだんその場に慣れてきたのか、口数が多くなる。
スポットが当たってるのは拓ちゃんのお母さんで、拓ちゃんがいかに子供の頃から優しくて可愛くて、母親思いの家族思いで、賢くて人気者だったかずーっと語り続けていた。
拓ちゃんはそれを無視して双方のお父さんとお兄さんたちと話をしていて、もっぱらずーっと聞き役は私と私の母親と兄嫁たちだった。

「本当にもう拓哉はいい子なんです。こんな拓哉のお嫁さんになる子は同じくらい可愛くて優しい子だろうと思ってました。まさか10も年上の仕事大好きなお嬢さんなんて……家の事も全部拓哉にやらせているなんて、気の毒で悔しくて悔しくて」
堂々と言われてしまい、肩身が狭くなる。
苦笑いなどしながら自分の母親の顔を見ると、気のせいか口元がピクついている。
気のせいでありますように。