私はあわてて立ち上がって頭を下げ、スタスタと歩く拓ちゃんの後ろを追いかけて玄関までたどり着く。
お母さんは「ちょっと待って!」と叫んでキッチンに走り、作り置きの総菜を保冷バックに入れて拓ちゃんに渡した。拓ちゃんは笑顔で受け取り「ありがとう」とお礼を言った。
「お式は絶対しなさい。優奈さんが年齢を考えてしないって言ってるんでしょう。かわいそうな拓哉。うちにはうちの流儀としきたりがあるのだから、親戚のみなさんにもお披露目を……」
「僕の考えは変わらないから。じゃ、また連絡するね」
お母さんの泣きそうな声を扉でシャットダウンして、拓ちゃんは私をエスコートしながら車に乗せて、敷地から出ていく。走って追いかけてきそうなお母さんをお父さんとお兄さんが全力で止めていた。兄嫁のポカンとした顔が妙に可愛く感じてしまい笑ってしまった。
拓ちゃんはクラクションを一度鳴らし、普通に私に「疲れたでしょう」と話しかけた。
遠ざかる拓ちゃんの実家を後にして、なんて言えばいいのか……いつも優しい拓ちゃんの男らしい姿というのか……意外と言うときは言うというのか……自分を曲げない姿というのか……意外だったかもしれない。
「優奈さん?大丈夫?」
「えっ?うん……うん大丈夫」
お母さんが敷地で倒れて泣いてないか気にかかったけど、大丈夫にしておこう。
「拓ちゃん?」
「なに?」
「マヤさんだかメイさんって誰?」
私がそう聞くと、拓ちゃんは苦笑いをして説明してくれる。
「前に付き合っていた人で、その頃も実家によく帰っていたんだ。そしたら『自分も連れて行ってほしい』って言うから連れて行ったんだ」
なるほど。優しくて顔もいい拓ちゃんはモテただろう。嫁になりたくて実家に連れて行って欲しかったのかな。
「でも、連れて行ったらなぜか別れるジンクスがあって、実は今日もちょっと不安だった」
そう言って笑った。
歴代の彼女の気持ちはよくわかる。あのお母さんと兄嫁は強烈だろう。
「だから、今日は優奈さんが絶対逃げないように宣言した。あれは僕の家族に言ったセリフじゃなくて優奈さんに言ったセリフだから」
「そうなの?」
「うん。僕から逃げないようにね」
そう言って私の頭を軽くポンポンする。10歳も年下なのに、たまに拓ちゃんは余裕を見せて私を年下扱いするから、クールキャラの私も崩壊してしまう。
「今度、裏山とか連れて行きたい。見せたい景色がいっぱいあるから」
「うん」
あのお母さんと兄嫁を紹介されても
なんとなく大丈夫だろうと思ってしまう拓ちゃんマジックだった。
お母さんは「ちょっと待って!」と叫んでキッチンに走り、作り置きの総菜を保冷バックに入れて拓ちゃんに渡した。拓ちゃんは笑顔で受け取り「ありがとう」とお礼を言った。
「お式は絶対しなさい。優奈さんが年齢を考えてしないって言ってるんでしょう。かわいそうな拓哉。うちにはうちの流儀としきたりがあるのだから、親戚のみなさんにもお披露目を……」
「僕の考えは変わらないから。じゃ、また連絡するね」
お母さんの泣きそうな声を扉でシャットダウンして、拓ちゃんは私をエスコートしながら車に乗せて、敷地から出ていく。走って追いかけてきそうなお母さんをお父さんとお兄さんが全力で止めていた。兄嫁のポカンとした顔が妙に可愛く感じてしまい笑ってしまった。
拓ちゃんはクラクションを一度鳴らし、普通に私に「疲れたでしょう」と話しかけた。
遠ざかる拓ちゃんの実家を後にして、なんて言えばいいのか……いつも優しい拓ちゃんの男らしい姿というのか……意外と言うときは言うというのか……自分を曲げない姿というのか……意外だったかもしれない。
「優奈さん?大丈夫?」
「えっ?うん……うん大丈夫」
お母さんが敷地で倒れて泣いてないか気にかかったけど、大丈夫にしておこう。
「拓ちゃん?」
「なに?」
「マヤさんだかメイさんって誰?」
私がそう聞くと、拓ちゃんは苦笑いをして説明してくれる。
「前に付き合っていた人で、その頃も実家によく帰っていたんだ。そしたら『自分も連れて行ってほしい』って言うから連れて行ったんだ」
なるほど。優しくて顔もいい拓ちゃんはモテただろう。嫁になりたくて実家に連れて行って欲しかったのかな。
「でも、連れて行ったらなぜか別れるジンクスがあって、実は今日もちょっと不安だった」
そう言って笑った。
歴代の彼女の気持ちはよくわかる。あのお母さんと兄嫁は強烈だろう。
「だから、今日は優奈さんが絶対逃げないように宣言した。あれは僕の家族に言ったセリフじゃなくて優奈さんに言ったセリフだから」
「そうなの?」
「うん。僕から逃げないようにね」
そう言って私の頭を軽くポンポンする。10歳も年下なのに、たまに拓ちゃんは余裕を見せて私を年下扱いするから、クールキャラの私も崩壊してしまう。
「今度、裏山とか連れて行きたい。見せたい景色がいっぱいあるから」
「うん」
あのお母さんと兄嫁を紹介されても
なんとなく大丈夫だろうと思ってしまう拓ちゃんマジックだった。