私の夫は完璧だ。

拓ちゃんこと、松沢拓哉君は私の夫である。年は私よりちょうど10歳年下で腕はいいけど、稼ぎは少ないwebデザイナーをしている。

とにかく優しい。顔も可愛い。
よく気が付くマメ男子で、誰からも好かれる男だ。
掃除上手で料理上手。私は胃袋をつかまれてしまった。

私は大手企業の広報で仕事をしている。仕事は楽しく順調でいつの間にか出世などしてお金も稼ぎ、年収は父親を超えてしまった。そのあたりから旅行に行く女友達も減ってしまい、付き合っていた男性とも縁がなく結婚まで至らなかった。それでも仕事は楽しく、そのうちマンションでも買って投資をしながらお金を貯めて、おばあちゃんになった時は綺麗な施設に入れたらいいなと思っていた。結婚は頭になかった。二人の兄は結婚して子供もいるので親は孫の顔も見ている。40近い娘に結婚話はタブーらしく、実家に帰っても誰も突っ込んでこない。

だからずーっと独身でいるはずだったのに
予定が狂ってしまった。

「大好きです!結婚して下さい」
いきなり拓ちゃんに言われた時は、驚きすぎて『はぁ?』と、気の抜けた返事しか出なかった。